記事特集
阪神・淡路大震災などの追悼行事で火を灯(とも)す竹灯籠(たけとうろう)を準備する活動を続け、昨年4月に肺腺がんで亡くなった山川泰宏さん=享年(82)=にささげる曲を、京都市西京区のシンガー・ソングライター堀内圭三さん(60)が作った。曲名も「竹灯籠の人」。東日本大震災に遭った東北の地で、山川さんと活動した堀内さんは「ひたむきに灯籠を並べる姿が心に残っている」と話し、被災地と向き合った実直な人柄を重ねる。(伊田雄馬)
山川さんは兵庫県西宮市に住み、市民団体「神戸・心絆(ここな)」の会長として、神戸・東遊園地の追悼行事「1・17のつどい」で竹灯籠を準備した。堀内さんも阪神・淡路の発災直後、京都から物資を運ぶ活動に従事。その後は足が遠のいたが、再び被災地に目を向けたきっかけが山川さんとの出会いだった。
2人は2012年9月、がん患者を励ますコンサートの会場で知り合った。当時、山川さんは竹灯籠づくりを東日本大震災の被災地へと広げていた。関心を持った堀内さんは、翌13年から「3・11」の追悼式典に同行するようになった。
向かったのは宮城県名取市閖上(ゆりあげ)の仮設住宅。「なんでわざわざ、と最初は思った」。現地で、その思いは覆された。目にしたのは地震が起きた午後2時46分が近づくにつれ、仮設住宅から一人、また一人と竹灯籠が並ぶ広場に集まる人たちの姿だった。
「誰もが失った家族の名が書かれた竹灯籠を探し、手を合わせていた」。亡き人をしのぶ場にゆらめく、ろうそくの小さな炎。山川さんの達筆で書かれた犠牲者の名前には不思議と、魂が宿る気がした。
堀内さんは18年までの5年間、山川さんらに同行。交流は続き、山川さんが同年ごろにがんの手術をしたことも知っていたが、20年4月、突然の訃報に接した。悲しみと同時に「生きざまを後世に伝えたい」と思いがこみ上げたという。
「私は忘れない 雪が舞い散る閖上(ゆりあげ)で あなたが灯(とも)した竹灯籠の灯(あか)りを」
バラード調の曲に乗せ、ギター一本で弾き語る。「在りし日の山川さんを思い出すと、自然に詞とメロディーが浮かんだ」と堀内さん。新型コロナウイルスのため告別式にも参列できず、伝えきれなかった感謝も歌に込めた。
「あなたはただ竹を切って 祈りの文字を書いて ローソクに火を灯して 祈り続けていた」
サビの歌詞は、多くを語らず作業に没頭した山川さんの姿そのものという。
曲は動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開している。山川さんの写真とともにアップし、無料で視聴できる。堀内さんは「ぜひ多くの人に聞いてもらい、震災の追悼行事が持つ意味を考えてほしい」と話す。
2021/1/15住宅倒壊、スーパー行列 阪神・淡路の映像記録、スマホで2021/1/25
「防災農地」兵庫でも始動 避難場所や仮設用地に2021/1/24
震災のこと、ようやく話せるかも 両親亡くした男性2021/1/19
亡き祖母の祈り「引き継ぐ」 震災26年2021/1/18
兄亡くした女性「お正月には、幸せそうに笑ってたね」2021/1/18
頭蓋骨骨折、乳がん発見 きっと、おかあが守ってくれた2021/1/18
「しあわせ運べるように」作った臼井さん、歌誕生地で指揮2021/1/18
学校防災マニュアル改定 保護者引き渡しのルール徹底を2021/1/18
生き埋めになったまま「子どもは?」 病院で知った妻の死2021/1/17
ひょうご安全の日のつどい 鐘が鳴り響き犠牲者悼む2021/1/17
神戸・東遊園地で1・17のつどい 遺族代表のことば2021/1/17
自慢の妹、最後の会話はミスチルCD「今度聞いておくね」2021/1/17
「孫の後ろ姿忘れられず」 震災26年、亡き人を思う2021/1/17
震災授業「6434人の中に、先生のお兄ちゃんがいます」2021/1/17
西宮震災記念碑公園で多くの遺族が祈り2021/1/17
「ここに来ればおふくろに会える」追悼の碑に母の名刻む2021/1/17
北淡震災記念公園で追悼行事 参列者は例年の4分の1程度2021/1/17
コロナ禍…オンラインで追悼 全国各地から祈り2021/1/17
発生時刻の朝「5時46分」 阪神・淡路大震災26年2021/1/17
発生26年の朝 阪神・淡路大震災 追悼の火ともる2021/1/17
広がる人口や経済の地域格差 都市の活力向上課題に2021/1/17
大震災で母亡くし中学時代泣きながら歌った「浜崎あゆみ」2021/1/17
「お母さんが喜ぶなら」 夢の小児科医になり感じる愛2021/1/17
「生」文字ライトアップ、震災からの再生願い 武庫川中洲2021/1/16
被災者の生活再建支え26年 大震災復興基金、5月に解散2021/1/16
「1・17ひょうご安全の日宣言」を発表2021/1/16
亡き娘のピアノ 震災の傷直し、今も変わらぬ音色2021/1/16
コロナ禍の「1・17」追悼 遺族の思いさまざま2021/1/16
追悼行事相次ぐ中止・縮小 「3密」回避、時間延長も2021/1/16
阪神・淡路、災害援護資金の返済免除 新たに1500件超2021/1/16
死者921人、全焼4760棟 警察署長が振り返る大震災2021/1/16
亡き祖父の励まし胸に声楽の道へ 届けたい希望の歌声 2021/1/16
震災体験伝え続ける 阪高で落下免れたバス運転手2021/1/15
追悼行事支えた「竹灯籠の人」 ひたむきな姿、歌で追悼2021/1/15
震災の教訓と経験発信へ 本紙「6つの提言」検証2021/1/15
震災乗り越えた小売市場 コロナ禍生き残りかけ奮闘2021/1/14
東北の子たちに1・17証言集寄贈へ 牧理事長ら2021/1/14
震災26年インタビュー 井戸敏三・兵庫県知事2021/1/14
震災26年インタビュー 久元喜造・神戸市長2021/1/14
神戸大院生の遺志継ぐ「竸基弘賞」 3人3団体を選ぶ2021/1/14
災害復興住宅の独居死71人 2020年の兵庫県内2021/1/13
コロナ禍で「1・17メモリアルウォーク」中止2021/1/13
震災で店半壊、傘売り負債返済 再起への逸話映画や本に2021/1/13
「今を頑張る」友の形見のドレスに誓う 今年も東遊園地へ2021/1/13
灯籠の文字は「がんばろう」 東遊園地の震災追悼行事2021/1/12
年齢や障害とらわれず、誰もがおしゃれを 原点は1・172021/1/12
放送各局が震災特別番組 コロナ禍の巨大地震想定など2021/1/12
本紙震災報道に密着 NHK・Eテレで17日再放送2021/1/12
学生が挑む、復興住宅に絆再び 尼崎・市営久々知住宅2021/1/12
1・17の東遊園地に並ぶ紙灯籠 応募が6千件超2021/1/11
アンケートで振り返る阪神・淡路大震災2021/1/11
兵庫県内の学校耐震化、21年度に完了2021/1/11
被災者の体験談に思い新た 大学生らが紙灯籠製作2021/1/11
コロナで1・17恒例の合唱中止 鎮魂と復興の歌、22年に響かせたい2021/1/10
阪神・淡路大震災、震災死者6435人に修正か 宝塚市で1人追加2021/1/8
1・17追悼の集い、遺族代表加賀さん 娘の存在、笑顔の支えに2021/1/8
被災、アルコール依存症… どん底から再起の男性、断酒会で立ち直り支援2021/1/7
震災追悼行事の動画配信 亡くなった学生らに黙とう 関学大2021/1/7
歌の思い伝え続ける 神戸発、世界の被災地で響く「しあわせ運べるように」作者退職へ2021/1/6
過去の災害、風化させぬ ボランティア団体がカレンダー2021/1/5
震災で火に包まれた鷹取東第1地区 区画整理20年2020/12/26
ラジ関1・17に震災特番 高校生ら記憶の継承考える2020/12/23
新長田再開発事業 市が検証報告書「商業にぎわいに課題」2020/12/23
新長田再開発の検証報告 商店主ら思いさまざま2020/12/24
被災地を歩く1・17メモリアルウォーク 参加者募集2020/12/22
震災遺族が自ら語る重み伝えた白木さん 目標だった銘板に2020/12/20
震災犠牲者らの名刻むモニュメント 新たに7人追加2020/12/19
借り上げ復興住宅控訴審 住民男性の控訴棄却 大阪高裁 2020/12/18
借り上げ住宅の異議請求訴訟 住民側の請求棄却 神戸地裁2020/12/18
新野さん、創造的復興理論で支え 兵庫の未来見据え提言2020/12/17
1・17行事、コロナ禍でも「鎮魂の思い途切れず」2020/12/17
来年1・17の追悼行事は42件 前年比18件減2020/12/17