森門下の糸谷哲郎九段が名人戦の挑戦者になり、藤井聡太名人に7番勝負を挑んだが4連敗で終わった。糸谷語録で「新手一局」の志で臨んだが、壁は厚かった。
神戸新聞社主催の女流王位戦にも、門下の大島綾華女流二段が福間香奈女流王位に5番勝負で挑戦中だが2連敗。
2人の弟子が同時期にタイトル戦に挑むのは師匠冥利(みょうり)に尽きるのだが、勝ち負けを考えると悩みの種が増える要素もある。
私は棋士の弟子や棋士を目指す奨励会員の弟子も多かったので、勝負に一喜一憂していると身が持たない。そう思って弟子の勝負には熱を入れるが、結果は翌日に忘れることにしている。
勝ってほしい願望がどれだけ打ち砕かれたことか、この世には神も仏もないのかとぼやいても「ない」のである。
糸谷九段が名人挑戦の初日に、いろいろ迷った末に近くの清荒神の一願地蔵に願掛けに行った。勝利祈願でなくて「弟子がいい将棋を指しますように」の弱気な内容で、一願地蔵様も勝負の神様も苦笑いしている?
大きな勝負の際は対局が終わってから一言感想を弟子に伝えることにしているが、糸谷九段は深夜でも律義に返事をくれる。ゆっくり休むようにとの内容だが、考えると深夜は迷惑だったなあ。
弟子の活躍は師匠の寿命を延ばす、これは私の実感だ。最近は病院通いでミスも多くて嫌になるが、勝ったり負けたりの揺らぎの中で生きているのは幸せなことに思う。
多くの弟子と関わっているが、弟子を増やそうと思ったことは一度もない。ひとりひとりとの縁なので、大きな宝物である。
【もり・のぶお】1952年愛媛県生まれ。将棋棋士七段。故村山聖九段ら棋士15人、女流棋士5人を育てた。著書に「逃れ将棋」「あっという間の3手詰」など。宝塚市在住、同市特別賞受賞。























