美昭さんの思い出を話す裏井宏さん(左から3人目)、妻直子さん(左端)、母とみ子さん(左から2人目)、息子の斗真ちゃんを抱く長女の美佳さん(右端)=淡路市富島
美昭さんの思い出を話す裏井宏さん(左から3人目)、妻直子さん(左端)、母とみ子さん(左から2人目)、息子の斗真ちゃんを抱く長女の美佳さん(右端)=淡路市富島

 今年創業106年を迎えた店がある。淡路市浅野南の総合衣料店「トシマダイマル」。店主の裏井宏さん(72)=淡路市富島=は30年前の1月17日、42歳で3代目を継いだ。先代の父美昭さん=当時(65)=は、阪神・淡路大震災で亡くなった。突然の代替わりに不安だったが、悲しむ間はなかった。働き者だった父の面影をそばに感じながら、ひたむきに日々を生きてきた。これからも。(古田真央子)

 震災が起きた1月17日、宏さんは木造3階建ての3階で妻直子さん(70)と子どもたちと寝ていた。異変に気付いて目を開ける。辺りはほこりっぽい。床は傾いていた。2階の両親に呼びかける。母から返事があった。しかし、父の声は聞こえない。覚悟した。