今年の台風1号の発生は、統計がある1951年以降で過去2番目に遅い今月3日だった。発生が遅い年は豪雨や台風が多発したり、一つ一つの台風の規模が大きくなったりする傾向が指摘されている。現時点で台風の数は二つと少ないが、専門家は「油断はできず、今年の夏は例年以上に注意が必要」としている。(阿部江利)
気象庁によると、台風の発生が遅かったのは、南米ペルー沖から太平洋の熱帯域で海面の水温が高くなる「エルニーニョ現象」が春に収束した影響で、台風が生まれる海域で空気の流れに変化が起こったためだ。
インド洋の海面水温が相対的に高くなり、盛んに上昇気流が発生。上空に上がった空気は、台風が生じるフィリピン東海上で下降気流を引き起こし、積乱雲の発達を抑えたとみられる。 過去最も台風発生が遅かったのは、1998年の7月9日。兵庫県内ではこの年の9月、台風に伴う豪雨で神戸市兵庫区の新湊川があふれ、同区内で住宅や商店など約670戸が浸水した。6月25日と過去4番目に遅かった83年も9月の台風により、県内で死者13人、負傷者16人を出した。
台風発生の遅かったケースのほとんどは、エルニーニョ現象から反対に海面水温が低くなるラニーニャ現象への移行期に当たり、今年も同様という。
移行期には予報が難しく、高気圧の張り出しが強ければ猛暑になり、弱い状況が続くと豪雨が起こりやすくなる。過去3番目に1号の発生が遅かった73年は高気圧の張り出しが強く、7~8月に台風12個が発生した。
神戸地方気象台の山口俊一台長によると、台風のエネルギー源は、熱帯で熱された水蒸気が水に戻る時のエネルギー。太陽は毎年同じように降り注ぐが、台風などが熱を運んで消費し、発散させるため、数が少ないと一つ一つのエネルギーが大きくなる可能性があるという。山口台長は「台風が一つできると続けて発生することも多い」と呼び掛けている。