ポーズを決める坂本花織=大阪市北区、関西テレビ(撮影・後藤亮平)
ポーズを決める坂本花織=大阪市北区、関西テレビ(撮影・後藤亮平)

 忘れられないシーズンを終え、また走りだした。平昌冬季五輪フィギュアスケート女子で6位入賞を果たした坂本花織(17)=シスメックス=は「あれ以上の緊張はもうないと思うし、緊張してもできたことは自信になった。『五輪6位』に見合う成績を今後も残していかないと」。オリンピアンの自覚を胸に、4年後の舞台を見据える。

 「よくここまで上がって来られたなと思う」。シーズンを振り返った坂本は実感を込めて言う。

 昨夏は新たなプログラムに悩み、苦しみ、涙した。三つのジャンプすべてを後半に組み込んだショートプログラム(SP)「月光」はなかなかミスがなくならず、「前のSPに戻したい」と思ったこともあった。フリー「アメリ」は動きが激しく、パントマイムの振り付けも多い。さらにジュニアより30秒長い4分半の演技時間。「案の定、体力が持たなかった」。

 シニアの壁にぶつかり、「これで年末の全日本で(五輪代表に)選ばれたら奇跡やな、というぐらいのレベルでした」と坂本。転機はグランプリ(GP)シリーズデビュー戦のロシア杯後に増やした朝練だったという。「先生(中野園子コーチ)から『今のままだったら駄目だよね』と言われ、それから毎日入れるようにしました。きつかったけど、朝から動けるんやったら夕方の試合も大丈夫だと」。練習からノーミスを続け、不安を少しずつ打ち消した。

 昨年11月のGPスケートアメリカで初めて合計200点超えの2位。そこから五輪への快進撃はシンデレラストーリーにも例えられた。

 「ひざががくがくした」と笑う緊張の五輪舞台は、団体5位、個人戦6位。他の選手から刺激も受けた。五輪を連覇した羽生結弦(ANA)には高いプロ意識を学んだ。「スケートのために行動している。抜くとこは抜くんですけど、無駄な動きがない」。金メダルを獲得したザギトワ、銀メダルのメドベージェワらロシア勢のすごみは肌で感じた。練習で3回転ジャンプを3、4連続で跳ぶ姿に「『練習で150パーセント(の力)』と聞いていたけど、練習はうそをつかないんだと見て分かった」

 ジュニア勢にも3回転半や4回転を跳ぶ選手はいる。「女子もトリプルアクセル、4回転の時代になってくると思うので、流れに乗り遅れないように。実際めっちゃ難しいんですけど」。以前、3回転半の練習中に疲労骨折したのを苦い教訓に、高難度のジャンプに耐えうる体づくりにも力を入れるつもりだ。

 「(五輪で得た)自信を胸に、今の勢いのままで頑張っていきたい」。4月から神戸野田高の3年生になった。躍動感あふれるジャンプが魅力の17歳は、これからも氷の階段を上り続ける。(山本哲志)