兵庫県議会は22日、定例会本会議を再開し、告発文書問題の情報漏えいを巡って斎藤元彦知事が6月の定例会で提出した自身の給与を減額する条例改正案について採決せず、再び継続審議とすることを賛成多数で決めた。県提出の議案が2回連続で継続審議になるのは前例がない。漏えいを巡る知事の責任の所在は2度の定例会を経ても結論が出ず、長期化が続いている。
県が設置した第三者調査委員会は5月、告発文書を作成した元西播磨県民局長(故人)の私的情報などが漏えいした問題について、斎藤知事が前総務部長に漏えいを指示した可能性が高いと報告書で指摘した。
斎藤知事は指示を否定。ただ、県保有情報が外部に漏れた「管理責任」はあるとして、3カ月間、自身の給与削減幅について現行の30%から50%に、服部洋平副知事も15%から25%に広げる条例改正案を6月定例会に提出した。議会の大半は「事実解明が先」などとして採決を見送っていた。
条例改正案は修正などがないまま9月の定例会中の総務常任委員会で議論されたが、「説明が不十分」などと反発が強く、自民党、維新の会、公明党、ひょうご県民連合の主要4会派が再び継続審議としていた。
この日の本会議では、常任委の申し出を受けて継続審議の賛否が諮られ、2人が討論に立った。躍動の会の岸口実県議は「他府県と比較しても重く、処分理由と処分内容の妥当性は十分」などと減額に賛成。共産党の庄本悦子県議は「指示を認めないまま給与カットで問題を終わらせようとしていることも含め、行政の長の資格を失しており、辞職を求める。継続審議は必要ない」と反対した。継続審議には主要4会派などが賛成した。
山口晋平議長は閉会後のあいさつで、昨年の知事選を巡る「2馬力選挙」や告発文書問題などの質疑に対する知事答弁を念頭に「一部議論が深まらなかった側面があったことは否定できず、議会として決して本意ではないことを申し添える」と異例の苦言を呈した。
斎藤知事は報道陣の取材で、継続審議について「議会の各会派の判断。真摯に受け止める」と繰り返し、議案の修正は否定。「総務常任委員会での審議になると思うが、これまで通りしっかり説明していく」と述べた。山口議長からの苦言には「答弁は自分ができる限りしている」と理解を求め、「評価の問題」と話した。(岡西篤志、井上太郎)
■特別職の報酬に詳しい太田肇・同志社大名誉教授(組織論)の話 首長自ら報酬カットを提案しながら可決されないパターンは、大きく2種類ある。パフォーマンスと受け取られる例と、もう一つは問題を矮小化する意図が透けて見える例で、兵庫の場合はおそらく後者と捉えられている。その場合、議会は通常否決するので、採決を見送るケースはあまり聞いたことがない。世論が割れる中、否決して批判を浴びるのを恐れているように映る。一方、知事は刑事責任の有無とは別に説明責任がある。真相究明は知事と周辺の協力が欠かせない。説明を求められているなら全面的に協力すべきだ。県民が納得できるよう、双方が踏み込んで事実を明らかにした上で結論を出す必要がある。