フィギュアスケート女子で全日本選手権に3度出場した神戸クラブの籠谷歩未(24)が、今季限りで現役を引退した。幼い頃から同い年の坂本花織(シスメックス)とともに中野園子コーチに師事し、同志社大を卒業後も2年間、会社勤めとスケートを両立。「振り返ってみれば一瞬だった。このクラブでずっとできて良かった」と20年近い競技人生を振り返った。
一部のトップ選手以外は大学卒業時に引退する選手が多い中、現役続行は挑戦だった。「ひたすら会社に行って練習に行って、寝て起きてという日々」。朝練がある日は午前4時半に家を出て同5時にはリンクへ。その後、電子機器メーカー「デンソーテン」(神戸市兵庫区)の総務部で定時の仕事をこなした。
5歳でスケートと出合い、坂本とは神戸市立なぎさ小、同市立渚中、神戸野田高と同じ道を進んだ。互いの母の送迎で練習に通い、後部座席で食事や宿題を共にした。ジュニア時代から坂本が世界で活躍する一方、自身は地方大会から一歩ずつ全国大会を目指した。しかし、引け目を感じることはなかった。「友達が(たまたま)五輪選手になった感じ」。2人の関係性は今も変わらない。
思い出に残るのは、全日本選手権での舞台以上に、重圧に打ち勝って切符をつかんだ西日本大会の演技という。最後と決めた今季は3年ぶりに全日本選手権に出場。「練習量が少ない中、試合で毎回全力を出し切れた」と悔いなく走り抜いた。
今年1月の国民スポーツ大会(岡山)は、坂本と県代表で成年女子の団体2位に貢献。坂本は籠谷の演技中に大粒の涙を流し、「この人本当にすごいなって。小さい頃から一緒にやってこられてよかった」と語った。
坂本は来季、ミラノ・コルティナ冬季五輪で3度目のオリンピック出場を目指す。籠谷は「もし行けるなら、お金をためて休みを取ってミラノに行きたい」。親友の集大成の演技を、現地で見届けることを願っている。(船曳陽子)