「大迫、半端ないって」-。サッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会で日本がコロンビアとの初戦を制した後、決勝ゴールを決めた大迫勇也選手(28)をたたえるフレーズが、メディアやインターネットをにぎわせている。一躍有名になったストライカーの代名詞は、高校時代に対戦した滝川第二高校(神戸市西区)の主将が発した驚嘆の声から“誕生”。当時同校監督だった栫(かこい)裕保さん(57)に逸材ぶりを聞いた。(佐藤健介)
体に吸い付くようなトラップからの鋭いターン。2009年1月の全国高校選手権準々決勝で、鹿児島城西高の大迫選手は卓越したボールコントロールとスピードを発揮。それまで大会無失点だった滝川第二高の守備陣は次々置き去りにされ、大迫選手の2ゴールを含む6失点で大敗した。
「彼は日本の宝。プロになっても伸び悩んでほしくない」。そう願った栫さんは試合後、大迫選手に近寄って握手。「日本を背負う選手になるはず。これからも一生懸命、頑張って」と励ました。すると、「本日はありがとうございました」と言い、丁寧に頭を下げたという。栫さんは「その目は澄んでいた。スター性を感じた」と振り返る。
大迫選手に相対した主将は、後ろから来たボールを走りつつ足元に収めるスーパープレーに驚き、ロッカールームで「大迫、半端ないって」と絶叫。この姿が動画投稿サイト「ユーチューブ」で反響を広げ、大迫選手の代名詞になった。
「負けて落ち込むチームを元気づけようというパフォーマンス。周囲のことを第一に考えられるキャプテンだった」と栫さんは明かす。その主将も「同じサッカー仲間として、あの時から大迫選手を応援している」と話しているという。現在は金融機関で働いており、取材などは断っている。
動画では「あれはすごかった。俺、握手してもらったぞ」と栫さんが笑わせる様子も。力の差を素直に認める姿勢から「負けを良いゲームにどうつなげるか考える大切さを教わった」。同校は2年後の同選手権で全国制覇を成し遂げた。