未来のタカラジェンヌを育てる兵庫県宝塚市の宝塚音楽学校で28日、第107期生の合格発表があった。合格発表といえば、学校職員が速やかに白布を下ろし、合格者の番号を示すという流れ。だが、ここは将来の宝塚歌劇団の面々が生まれる特別な場所。在校生による「歌劇風」演出で、合格発表も「ジェンヌらしさ」を魅せる。
今年の受験者は915人。合格できるのは40人。競争倍率は実に22・9倍という狭き門だ。
同校では、髪をきっちりと後ろでまとめた15~18歳の女性の受験者とその保護者が同校に集まり、発表時間の午前10時を待った。
発表は校舎の前。時刻ちょうどになると、校舎内からグレーの制服を着た音楽学校の在校生7人が、2つ折りの板を運んできた。広げると、約1メートル×約1・7メートルの大きさ。中に合格者番号が書かれているのだが、閉じられていて見えない。
板を2つ折りのまま壁に掛けると、6人はその前にある灰色の階段に1段2人ずつ、下に向かって広がるような位置に立つ。残る1人は中央で白い台に乗った。
ヒールのある靴をはき、スッと背筋を伸ばした立ち姿で、堂々とした表情。先頭の1人が抑揚の効いた声を上げた。「皆さま、大変長らくお待たせをいたしました。ただ今より、宝塚音楽学校入学試験の合格者を発表します。合格された方は、受付までお越しください。それでは-」。ここで一呼吸をおき、ひときわ大きな声。「発表いたします!」。灰色の階段は、歌劇のステージを思わせる。
階段にいる在校生が赤いリボンを引き、2つ折りの板を開くと40人分の番号が。その瞬間、そこかしこで歓声と悲鳴が上がる。友人や母親と抱き合う者、涙を流し恩師に電話をする者、その一方で、硬い表情で下を向き、静かに去る姿も。
幼い頃から夢に見た宝塚音楽学校。「2年間つらい時もあると思うけど立派なスターになりたい」。合格者が見せる笑顔と涙も、先輩の在校生たちに負けない演出だった。(小谷千穂)