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 「眠れない日が続いて、身も心もボロボロだった。でも、娘が『お母さんのそばにいたい』と言うので、施設には入れなかった」

 兵庫県西宮市の集合住宅で、同居の次女=当時(36)=の遺体を放置したとして死体遺棄罪に問われた女(68)は、裁判でそう語った。

 女はもともと5人暮らし。いずれも筋力が徐々に落ちる難病「筋ジストロフィー」を患う夫、長女、次女、三女の4人を1人で介護し、少しずつ症状の重くなる家族を支えてきた。

 しかし約8年前までに次女以外が亡くなり、2人暮らしに。次女も徐々に症状が悪くなり、寝たきりの状態になったという。

 今年3月下旬、手押し車にごみを積み、うつろな目で歩く女に警察官が声を掛けた。自宅に送り届けると、ごみの下から足のようなものが出ていた。次女の遺体だった。

 女の説明によると、その月初め、自宅で次女の下着を替えさせようとすると反応がなく、体は冷たくなるばかりだった。だが「誰かに相談することは思いつかなかった」と語った。

 女には、外出した際に捨てられた家具やごみを拾い集めてしまうという病的な収集癖があったという。

 検察は、こう指摘した。「ごみ屋敷のような室内で家族が死亡したことを世間に知られるのを恐れ、新たな居室を見つけるまでは自宅で隠そうと考えた」

 発見時、女は新居を探そうと事実上の徘徊(はいかい)を繰り返し、ほとんど家に帰らない状態だったという。

 判決で裁判官は「死者の尊厳を傷つける行為」と悪質性を指摘。一方で「長年にわたって家族の介護に身をささげてきた。反省し、生活を改めると話している」と語り、執行猶予とした理由を説明した。

 女は事件までに3人の家族を介護し、施設にも頼ってきた。なのに次女に限ってなぜ諦めたのだろう。公判では次女が生前、施設で亡くなった家族を見てきた故に、こう言い続けていたことが明らかにされた。

 「お母さんのそばにいたい」

 この裁判を知った女性からこんな手紙を受け取った。「このような人を救うための社会制度は整備されているのか。いつか自分たちが同じ立場に立つことになるかもしれない」

 最愛の人の最期に寄り添う。その難しさを思う。

 「申し訳ございませんでした」。公判で涙を流した女の小さな後ろ姿が頭から離れない。(村上貴浩)

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