兵庫県芦屋市消防本部に、水中に沈んだ人を助ける「潜水隊」が発足した。普段は消防隊や救助隊として活動する隊員のうち、潜水士の国家資格を持つ11人で構成。芦屋海浜公園水泳プール(同市浜風町)などで訓練を積み、有事の際はいち早く人命救助に向かう。(中川 恵)
「子どもがいない。海に落ちたかも」。有馬信之介消防司令補(44)はおよそ6年前の通報が忘れられない。幸い、子どもは別の場所にいたが、パニックになる母を前に、助けに行きたいのに行けなかった。その悔しさが、今年4月の潜水隊立ち上げにつながった。
芦屋市内では年に2、3件の水難救助事案がある。救助隊がボートやレスキューボードを使って救出を試みるが、要救助者が沈んだ場合は、海上保安庁や県警潜水隊に救助要請をするしかなかった。
潜水隊は県内で海に面した自治体や、内陸でも伊丹や宝塚市などにあるという。芦屋市は人数や予算の関係で未整備だったが、2018年度に計画を策定。心や体の適性検査をクリアした職員が潜水士の試験を受け、合格後は1年間、養成隊員としてさらなる研さんを積む。
潜水隊員は通常の消防、救助訓練とは別に、装備の着脱や緊急時の対応、実際に要救助者を捜すなど、特別な訓練を年20回以上こなす。特に海では水が濁ったり、波が高かったりするため、まずは自分たちの安全を確保することの大切さもたたき込む。
有馬消防司令補は「潜水隊の発足は一つの通過点。技術を磨き、隊員を増やして、いざというときに備えたい」と話す。梅雨が明ければ夏本番となり、川や海で遊ぶ人も増える。「自分は大丈夫だと過信せず、海や川のレジャーを楽しんでほしい」とした。
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