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【右上】三つ子の末っ子、ジェイ・リザーランド選手(中央)【右中】ライトアップされた五輪マーク【右下】西宮市長を訪ねた大矢勇気選手の記者会見【左】孫のジェイ・リザーランド選手の写真を見せる中村孝さん
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【右上】三つ子の末っ子、ジェイ・リザーランド選手(中央)【右中】ライトアップされた五輪マーク【右下】西宮市長を訪ねた大矢勇気選手の記者会見【左】孫のジェイ・リザーランド選手の写真を見せる中村孝さん

 「ゴー! ジェイ!!」

 6月13日、米国ネブラスカ州の最大都市・オマハ。水泳の米国代表選考会で、男子400メートル個人メドレーの3番レーンを青年が進む。その母親が叫びながらスマートフォンで撮った動画は興奮のあまり、ぶれまくっていた。

 レース終盤で、持ち前の猛烈な追い上げが始まる。

 「よぉしっ!!」。距離にして西へ1万キロも離れた兵庫県尼崎市で、会社経営の中村孝さん(80)は、撮影した長女からの動画を食い入るように見て叫んだ。

 2位。愛孫のジェイ・リザーランド選手(25)が、ついに東京五輪の切符を手にしたのだ。

 3歳まで尼崎で育ち、関西弁も堪能。大好物は「551の豚まん」だ。8歳で水泳を始めて頭角を現し、2年前の世界選手権では、日本のエース瀬戸大也選手と残り50メートル地点で2秒以上あった差を最終0・27秒に縮める大接戦を見せた。

 「古里・日本での五輪は別格だよ」。そう言い続けてきた孫に、中村さんは電話で伝えた。「東京で会おうな!」。しかし、無観客での開催が決まると、約束は幻となってしまった。

 東京へ行けなくても、自宅で応援会を開く予定だ。

 「どんな形であれ、無事に泳ぎきる姿を応援するのが、家族ってもんや」

    ◇

 阪神間でもさまざまな応援の形が見えてきた。

 サッカー男子の堂安律(どうあんりつ)選手(23)=尼崎市出身=に向けては、子どもたちが幅2メートルを超える応援旗を作って商業施設に掲げた。飛び込み女子の板橋美波(みなみ)選手(21)=同県宝塚市在住=には、在学する甲子園大学が、学内に大型スクリーンを設けて放映すると発表した。

 ただ、高まる応援ムードの陰で、感染者は再びV字形に増えている。

 「体調管理は、過去のどの国際大会よりも神経を使う」。パラリンピック陸上男子車いす100メートルの大矢勇気選手(39)=同県西宮市出身=は、西宮市役所で臨んだ会見で明かした。

 脳腫瘍があって投薬を続けているため、ワクチンを打てないという。選手や関係者は、外部との接触が制限される「バブル」の状況にいるはずなのに、既に陽性判明者が相次ぎ、クラスター(感染者集団)が発生する恐れも捨てきれない。

 「本人の生きる糧である五輪はつぶせない」。後援会長の田中忍(しのぶ)さん(63)は中学時代から知る教え子の夢と覚悟を認めつつ、不安を隠さなかった。

    ◇

 今月19日、尼崎市役所。市内の新規感染者が再び2桁となり“感染第5波”が現実味を帯びる中、記者説明会を申し入れてきた市職員の顔は紅潮していた。

 「今後もワクチンの供給不足が続けば、さらに市民への接種量を抑制しなければいけない」と切り出し、県に事態の改善を求めて直訴することを打ち明けた。

 ワクチンは当初、五輪開催の「切り札」とされてきた。しかし、多くの市町村に希望量が届かない。政府が当初目標に掲げた「11月末まで」は見通せず、「人類がコロナに打ち勝った証し」とした五輪の位置付けは看板倒れになった。

 苦しそうに職員がはき出した。

 「注射の打ち手も接種会場も急ピッチで整えてきた。なのに、今になって市民への接種スピードをわざわざ下げる。こんなやるせなさがあるか」

    ◇

 過去に例のないコロナ禍での五輪がきょう開幕する。「平和の祭典」として人々の心に刻まれるのか、それとも感染拡大の引き金になるのか。その瀬戸際に、私たちはいる。(竹本拓也、村上貴浩)

=始まりの前の、おわり=

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