阪神

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演説後に有権者とグータッチする菅義偉前首相(中央)=10月16日午後、阪急宝塚駅前(撮影・斎藤雅志)
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演説後に有権者とグータッチする菅義偉前首相(中央)=10月16日午後、阪急宝塚駅前(撮影・斎藤雅志)
維新の吉村洋文副代表の演説を聴くため詰めかけた聴衆=10月24日、西宮市高松町(撮影・大田将之)
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維新の吉村洋文副代表の演説を聴くため詰めかけた聴衆=10月24日、西宮市高松町(撮影・大田将之)
吉村氏の大きな顔写真があしらわれた街宣車。あらゆるポスターやチラシにも顔が掲載された=10月19日午前、西宮市甲子園二番町(撮影・大田将之)
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吉村氏の大きな顔写真があしらわれた街宣車。あらゆるポスターやチラシにも顔が掲載された=10月19日午前、西宮市甲子園二番町(撮影・大田将之)
僅差で勝利し、支援者に頭を下げながら事務所に着いた山田賢司氏(中央)=1日未明、西宮市上甲子園1(撮影・斎藤雅志)
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僅差で勝利し、支援者に頭を下げながら事務所に着いた山田賢司氏(中央)=1日未明、西宮市上甲子園1(撮影・斎藤雅志)
応援ポーズが「ナチス式敬礼」に似ているとしてSNS上で批判された桜井周氏の応援演説会(ツイッターから)
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応援ポーズが「ナチス式敬礼」に似ているとしてSNS上で批判された桜井周氏の応援演説会(ツイッターから)

 解散から投開票までが戦後最短となった衆院選が終わった。4年ぶりの政権選択選挙で、新型コロナウイルスの影響が広がる中では初の大型国政選挙。阪神間の兵庫6区(伊丹市、宝塚市、川西市南部)、7区(西宮市南部、芦屋市)、8区(尼崎市)には3人ずつ計9人が立候補し、比例復活を含め6人が当選した。選挙戦を記者たちが振り返る。(衆院選取材班)

■維新「差し脚」爆発

 A とにかく慌ただしかった。選挙取材はいつも大変だしバタバタ忙しいけど、今回はとりわけ時間がなかった。コロナ対応も必要だし、候補者や陣営はほんと大変だったろうね。

 B 岸田政権発足(10月4日)から1カ月弱の短期決戦。阪神間でも与野党を問わず「11月前半に投開票」とみている陣営が多かったから、首相の「奇襲」には慌てていた。

 C 阪神間では、なんといっても維新の勢いがすごかった。競馬でいうと「差し脚」が爆発した形。いわゆる「吉村人気」を受け、6、7区では終盤になって強烈に伸びてきた。

 A そう。特に6区は公示前から「県内屈指の激戦区」といわれていた。

 E ただ事前に想定された構図は、前回に続いて自民前職と立民前職がどこまで争うか-というもの。情勢調査をみても、維新元職が自民を脅かすとまでは考えられていなかった。

 D 出口調査で、維新元職のラスト2日間の追い上げには鬼気迫るものを感じた。改めて「風」の怖さ、すごさを思い知らされた。

 E 維新陣営の手応えも、取材に足を運ぶたび変わっていた。序盤は「厳しい」と吐露していたけど、終盤には「勝てるかも。少なくとも比例では当選できる」になっていた。

 A 自民前職は菅義偉前首相を支えた無派閥グループ「ガネーシャの会」の一員。コロナ対応で批判を浴びた菅氏の来援も受けたが、逆効果だったかも。

 D 維新に2069票差で敗れ、比例復活した自民前職が「6区は無党派層が多く、本当に難しい」と語ったのが印象的だ。6区で一つの政党が連続勝利したのは、彼が初めて。3期9年を務めても、安定的な地盤が築けない。

 C 民意の移ろいやすさという意味で、今後も注目選挙区となるだろうね。

■NHK出口に陣営落胆

 B 7区も序盤は自民前職が優位だった。でも日を追うごとに維新元職が伸びてきて、終わってみると自民に1530票差と迫った。6区同様、どちらが勝ってもおかしくなかった。

 A 投票終了後、NHKの出口調査では維新元職が約10ポイントリードと報じられていたから、支援者の集まった事務所は「負けた」と暗い雰囲気だった。

 B 夜遅くに当選確実の報を受け、事務所に現れた自民前職は涙目だった。喜ぶ支援者に両手を合わせ、何度も頭を下げた。

 A 待機中の本人と電話で話した人によると、相当弱気になっていたらしい。万歳のときは喜びを爆発させたけど「もつれたのは自分の不徳の致すところ」と語り口は神妙だった。

 C 対する維新元職は「少なくとも比例復活は確実」の報を受け、喜びと悔しさが入り交じった顔でスタッフに「なんか暗いけど、当選したんやで」と繰り返していた。自分に言い聞かせているようにも見えた。

 D 吉村人気といえば、維新は最終盤に6、7区を「重点候補者」としててこ入れした。吉村洋文副代表が来援すると、黒山の人だかり。安倍、菅、岸田の歴代3首相も与党候補の応援へ訪れたけど、それをしのぐ聴衆だった。ファミリー層や女性が目立ったね。

 C 熱狂的だった。胸の前で手を握りしめて目を輝かせる女性や「吉村さんとグータッチしたかった」とぐずった子どももいた。

 D 潮目が変わったのがいつなのか正確には分からないけど、あのときは「維新旋風」を実感した。

 A 比例でも、阪神間の自治体では維新が軒並み最多得票となった。

■「ナチス式」と誤解、ネットで炎上

 C 象徴的なのは、維新の候補者がいなかった8区。ここは公明が「牙城」としてきたけど、そこでも維新が比例1位を奪い取った。投開票の翌朝、維新の尼崎市議は「夢のようだ」と興奮していた。逆に公明の危機感は強いだろう。

 B 共産は初めて7区で擁立を見送った。阪神間で候補を立てたのは8区だけ。ジェンダー平等など、若者に響く政策にかなり演説の時間を割いていた。高校周辺でリーフレットを配り、選挙はがきも10~20代向けのデザインをこしらえていた。党の変化を印象づけ、支持層を広げたい意識が表れていた。

 D どの陣営もSNS(会員制交流サイト)での発信に力を入れた。一方、リスクも見えた。

 E 6区の立民前職がツイッターに投稿した演説会の動画だね。壇上の支援者たちが「ナチス式敬礼」に似たポーズを取っていた、とネットで指摘された。

 D 陣営は「そうした誤解を招かないよう気を付けたつもりだった」けど、思わぬ広がり方をした。積極的な発信とリスク管理を両立する難しさが浮かんだ。

 A ネット関連でいえば、衆院選の話題はあまり読まれないのかな。神戸新聞ネクストで阪神地域の記事はいつもより閲覧件数が少なかった。読んでもらえる記事、心に届く企画を探っていかないと。

■情勢予測、精度に課題

 C 報道機関にとって宿題はもう一つ。情勢取材の正確性だ。読みにくい選挙だったが、今回は各社の情勢予測がばらばらだった。

 A 期日前投票の割合が増えたり、固定電話のある家が減ったりと、昔と同じ手法では動向を正しくつかめなくなっている。さっきも話題になったけど、7区ではNHKの出口調査も実際と大きく食い違った。

 B 当選した陣営は「結果判明までの2~3時間で『天国と地獄』がひっくり返った」と語った。

 B 出口調査は当落の速報だけでなく、支持政党と投票先の関係や、重視した政策の分析にも使われる。その信頼性にも関わるから、報道機関は出口調査が全体を反映したサンプルになるよう精度向上に努めなきゃいけないね。

 A 今回も投票事務にミスが散見された。ただ「ミスの常連」といわれた西宮市選挙管理委員会で大きなミスはなく、関係者の喜びは大きかった。開票事務の終了時、ミスゼロと聞いて小さく拍手する職員も。一方、確定時刻は想定より遅く、早さと正確性の両立が課題だ。

 C 尼崎、西宮、川西では来年、市長選がある。まだ立候補を表明した人はいないけど、衆院選で維新の勢いが改めて示され、構図に影響を与えそうだね。

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