高齢者を狙った特殊詐欺の被害を減らそうと、武庫荘総合高校の演劇部員7人が26日、地域住民を招いた「みんなの演劇祭」を兵庫県尼崎市内で開き、被害防止の啓発劇を上演した。「地域のつながりをつくり、お年寄りの孤立を防ぎたい」と企画。上演後は交流会も開き、幅広い世代が肩の力を抜いて語り合った。(山岸洋介)
企画したのは2年生の前高春花さん(17)。アルバイト先のコンビニ店での経験がきっかけになった。
よく高齢の常連客から「独居で不安」「寂しい」と聞かされるほか、店長からは認知症の人がプリペイドカードを買いに来たときに声を掛け、架空請求詐欺を阻んだエピソードも聞いた。孤立しがちな高齢者を地域で見守る大切さを痛感し、人がつながる機会をつくりたいと思うようになったという。
今春、地域の課題解決に挑む高校生を支援する市の事業に応募。高齢者の交流を促すという演劇祭の案が、高評価で採択された。
前高さんが演劇部の同級生に「一緒にやろう」と相談すると、役者2人と裏方4人が快諾してくれた。脚本は、前高さんが店長から聞いた出来事をもとに執筆。高齢者施設や訪問看護の現場を訪ねて認知症への理解を深め、尼崎北署の助言も受けて仕上げた。
上演作「もしも…」は、認知症初期の高齢女性が家族から「詐欺に気を付けて」と注意されるが、自分は大丈夫と思っているうちに詐欺の電話にだまされる-という内容。前高さんら3人の演技に、客席の地域住民は引き込まれていた。
交流会では約50人が6班に分かれ、劇の感想を語り合ったり、困りごとや趣味を互いに紹介したりした。ゲートボールの話をする高齢者に高校生がルールを尋ねたり、会員制交流サイトで使う「#」(ハッシュタグ)の意味を高齢者が問うたりする場面もあった。
市の福祉担当者は「身近な高齢者の変化に気付いたら、すぐ相談してほしい」と呼び掛けた。
出演した笹山麗さん(17)は「顔も知らない間柄だったけど、世代を超えて盛り上がれた」。前高さんは「お年寄りの外出機会をつくるため準備してきた。交流が広がり、喜んでもらえてうれしい」と話した。
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