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水中で銀色に輝くボラ=芦屋市内の宮川河口付近
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水中で銀色に輝くボラ=芦屋市内の宮川河口付近
群れで移動するボラ=芦屋市内の宮川河口付近
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群れで移動するボラ=芦屋市内の宮川河口付近
潮位が下がり、水が引いた川底に取り残されたボラ=芦屋市内の宮川河口付近
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潮位が下がり、水が引いた川底に取り残されたボラ=芦屋市内の宮川河口付近
ボラをくちばしでつつく鳥=芦屋市内の宮川河口付近
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ボラをくちばしでつつく鳥=芦屋市内の宮川河口付近

 高級住宅街として知られる兵庫県芦屋市の宮川河口付近で、海水魚のボラが大量に発生している。黒い影がうごめくのが不気味で、びっくりしてのぞきこむ住民が後を絶たない。水中カメラでのぞくと、うろこが日差しに反射してきらきらと光る。

 干潮で水位が下がると海への「帰り道」がなくなり、幅5メートルほどの川を大群が行ったり来たりと大渋滞。ときどき飛んでくるカワウやサギにとってはまさに食べ放題で、しきりにくちばしを水面に突き刺している。

 水が引いた川底には100匹以上が取り残され、口をパクパクしている。一部は白い腹を上に向け、沈んで動かない。このときは腐敗臭もなかった。

 県西宮土木事務所によると、死因が水質汚染だったり、ボラが積もりすぎて流れが滞ったりと状況が悪化すれば、市などと対応を検討するというが、今の所は「自然の営みの範囲」とする。

 地元の「芦屋川に魚を増やそう会」の山田勝己さんは、まだ息があるボラを水中に放り投げて救出しつつ「こんな数は初めて。群れすぎて窒息死してしまったのでしょうか」と心配そうだ。

 須磨海浜水族園(神戸市須磨区)の担当者によると、ボラは基本的には海水魚だが、淡水と混じる汽水域にも姿を現し、幼魚の間は敵から身を守るために群れて泳ぐという。

 大量発生については「それほど珍しいものではない」としつつ「水温の変動など何らかの要因で川の方が居心地が良いとか、体に着いた寄生虫を落とすためとか、そんな可能性は考えられる」と見立てる。

 その上で「まさか潮が引いて海に帰れなくなるとは思わなかったでしょうね」と死んだボラを悼んだ。(大田将之、斎藤雅志、村上貴浩)

     ◇

■環境研究に一役、食べても美味

 阪神間の海で釣りをしていると、ときどきボラがヒットする。糸を巻き上げ、平たい頭が水面に見えてくると「なんや、ボラか…」と少し残念な気持ちになる。釣りでは「外道」の代表格。親からは「くさくて食べられへん」と教えられた。

 海や河口に限らず都会の汚れた水路でも平然と泳いでいて、見つけてもなんの感動もない。偏見かもしれないがボラという名前さえ、やぼったく思えてしまう。

 理不尽に冷遇してしまっているが、専門家に聞くと意外な一面を知った。

 須磨海浜水族園(神戸市)によると、ボラは世界的にもポピュラーな海水魚だという。「日本にいるボラも地中海にいるボラも同じです。だからボラは環境の研究にも使われています」

 出世魚で、関西では成長するに連れてハク、オボコ、スバシリ、イナ、ボラ、トドなどと呼び名が変わる。どこにでもいて人々の生活に身近な魚だからこそ、「おぼこいね」「いなせだね」「とどのつまり」といった言葉の語源になっているとの説もある。

 さらに驚いたのが、ボラは食べられるということ。寒ボラの刺し身は、とてもおいしいらしい。

 藻類や沈殿した有機物をエサとするため、汚れた海では泥臭くなってしまう。ただ、潮通しの良い海や外洋のボラはおいしく食べられるそうだ。冬が旬で、あっさりしながらも脂の甘みが美味だという。

 いつも人間のそばでのんびりと泳ぎ、研究にも一役買っていて、実はおいしいボラ。急にありがたい存在に思えてきた。今までぞんざいに扱ってしまっていたことを反省します。すみませんでした。(大田将之)

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