車掌、増山武司(44)。脱線事故の直後に浴びせられた言葉が、今も胸にある。-「人殺し」
当時27歳。車掌として9年目。走行中、電車内にある車掌室をノックされて扉を開けると、目の前に立つ乗客から突然、投げつけるようにそう言われた。
目がくらみ、激しく動揺したが次の瞬間、確かにその通りだ…と感じて心がしぼんでいく。
「申し訳ございません。安全に運行します」と頭を下げつつ、安全とは何かが分からなくなっていった。
JR西日本に入ったのは高校卒業を控え、進路指導の教員に勧められたのがきっかけだった。通学に電車を使った経験もなく、イメージも湧かなかったが、三ノ宮駅で働く社員たちを見て心を決めた。「ドア、良し!」。指をさして確認する姿が「カッコイイ」と感じた。
入社して安全への使命感をたたき込まれたはずだったのに、培った自信は一瞬にして崩れる。所属した「大阪車掌区」では、事故のあった宝塚線でもたびたび乗務してきて、乗客106人の死に対して、自分が無関係とは思えなかった。
事故から数カ月間、何度も車掌室のノック音を聞いた。出るたびに乗客から非難を浴びせられる。時には「この電車は脱線しませんよね?」と不信感をぶつけられ、乗務へのプレッシャーがのしかかっていった。
そんなある日、再びノックされて扉を開けると、初老の小柄な女性が立っていた。「申し訳ございません…」。反射的に頭を下げようとすると言われた。
「頑張ってるね。大変だけど、安全にいってね」
思いも寄らない言葉に、思わず涙があふれた。
一から仕事を見直そうと思った。電車の安全確認をする車掌の「基本動作」は、年数を重ねるほどにスムーズにできるようになる。しかし、いつしか流れ作業になっていなかったか。
女性の言葉が気付かせてくれたのは、客は電車に乗った以上、自分たちを信頼するしかないという利用者目線の現実だった。
「目の前の行動一つ一つがどこまで安全につながっているかを常に考える」。それが仕事に対する責任だと強く思うようになった。
「ドア、良し!」。車掌歴26年に迫っても、新人のように大きな声を出す。
車掌室を出てホームを見通すと、車両側面の縦線をたどって地面で直角に曲がり、点字ブロックに至るまでの形が「L」に見える。
通称、L空間。「ドアの開閉時や出発時はここに人がいないか確認する。異常があればすぐに電車を止めること」。後輩たちに伝えると、それは今や組織的にも車掌業務の重要ポイントとして注目されている。
「生涯、現役の乗務員でいたい」と願う。胸に刺さった非難の言葉に罪悪感は消えない。ただ今は拭うのではなく、心の芯に抱えていきたいと思っている。(村上貴浩)
【バックナンバー】
【2】事故後、最初の運転で手が震えた
【1】それぞれの模索

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