阪神

  • 印刷
「父兄の方へ」と呼び掛ける注意書き=芦屋市大桝町
拡大
「父兄の方へ」と呼び掛ける注意書き=芦屋市大桝町

 兵庫県芦屋市内の公園で、注意を呼び掛ける張り紙を見つけた。「父兄の方へ ここでの砂遊びはお止めください」。その内容には全くもって同意するが、冒頭の「父兄の方へ」が目に留まった。そういえば「父兄」という言葉を久々に見た気がする。私たちの世代は分かるけれど、なぜその言葉は消えつつあるのだろう。(中川 恵)

 デジタル大辞泉によると「父兄」には「父と兄」の意味だけでなく、「児童生徒の保護者」の意味がある。もちろん冒頭の張り紙は後者と分かるが、私たちの記者用パソコンに「父兄」と入力すると「注 不快」と表示される。「記者ハンドブック 新聞用字用語集」に基づく注意の要請だ。

 本にもなっている手元の用字用語集の第14版(2022年3月発行)は「保護者の意味で父兄は使わない」と明記する。さらに注意すべき「差別語、不快語」の欄には「父兄会、父母会」を「保護者会」に書き換えるように求める。

 どのような経緯をたどったのか。編集した共同通信社の校閲部に確認した。新聞、放送、通信の分野で、記者たちが日々使う用語について、その考え方を示す部署だ。

     ◆

 「父兄会」を使わないようにする注意喚起は、1986年4月発行の5版3刷からだという。当時の注記は「父母会とする方が望ましい」だったが、6年後の92年4月発行の6版5刷では「父母会、保護者会」への書き換えを求めた。「父兄」は男尊女卑とも取れる言葉であること、戦後PTAの発足により「父兄会」という言葉が世間でも使われなくなったことなどが背景にあるという。

 その後、「父母会」についても「親のどちらかがいない場合もある」として、なるべく「保護者会」を使うよう推奨した。さらに踏み込んで2001年3月発行の9版では「父兄会」を「差別語・不快語」の欄に入れた。05年3月発行の10版からは「保護者の意味で父兄は使わない」との注釈を入れるまでになった。

     ◆

 慣例的に「父兄」という言葉は今も結構使われる。愛知医科大学(愛知県長久手市)には「医学部父兄後援会」があった。ただ問い合わせると、今年5月の総会で「多様な家庭がある中、父兄はそぐわない」という意見が多数寄せられ、11月の創立50周年記念式典を前に改称予定だという。

 神戸新聞社の記事データベースで「父兄」を検索すると、記者が書いたのは2000年以降ほぼないものの、読者が寄稿する少年野球のチーム紹介や文芸欄などでは時々登場している。

 言うまでもなく、多くは家父長制的な家族観からではなく「保護者」という意味で悪意なく使っており、芦屋の張り紙についても揚げ足を取るつもりは全くない。ただ調べて、はっとした。

 たかが言葉、されど言葉-。そこには人々の気付きと知恵が込められている。

阪神
阪神の最新
もっと見る
 

天気(8月14日)

  • 34℃
  • ---℃
  • 40%

  • 34℃
  • ---℃
  • 50%

  • 34℃
  • ---℃
  • 30%

  • 33℃
  • ---℃
  • 50%

お知らせ