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住民から愛されてきた大箇温泉=西宮市津門大箇町、大箇温泉
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住民から愛されてきた大箇温泉=西宮市津門大箇町、大箇温泉
店頭に立つ岡本賢嗣さん(中央)、早苗さん(右)と銭湯の仕事を手伝う次男の圭介さん=西宮市津門大箇町、大箇温泉
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店頭に立つ岡本賢嗣さん(中央)、早苗さん(右)と銭湯の仕事を手伝う次男の圭介さん=西宮市津門大箇町、大箇温泉
風呂の日に並ぶアヒルのおもちゃ=西宮市津門大箇町、大箇温泉
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風呂の日に並ぶアヒルのおもちゃ=西宮市津門大箇町、大箇温泉
天然温泉「宮泉の湯」が自慢の露天風呂=西宮市津門大箇町、大箇温泉
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天然温泉「宮泉の湯」が自慢の露天風呂=西宮市津門大箇町、大箇温泉

 阪神・淡路大震災を乗り越え、兵庫県西宮市津門大箇町で住民らの憩いの場となってきた創業62年の銭湯「大箇(おおご)温泉」が31日にのれんを下ろす。新型コロナウイルス禍で客が減り、物価高に伴う燃料の高騰や設備の老朽化が重なった。市内で銭湯は5軒だけとなり、常連客から惜しむ声が多く寄せられる中、経営する岡本賢嗣さん(78)と妻の早苗さん(72)が思いを語った。(池田大介)

♨湯船求めて50メートルの行列

 1960(昭和35)年、賢嗣さんの父の故・俊三さんが市営の銭湯を買い取り、経営を始めた。当時は高度経済成長期で深夜まで客でにぎわい、1日に200人ほどが利用することもあった。女性の脱衣所には子どもの着替えを世話する従業員もいたという。

 70年、長男の賢嗣さんと早苗さんは結婚を機に従業員として働き始める。

 「お客さんがたくさんで、晩ごはんをゆっくり食べる暇もなかった」。95年の阪神・淡路大震災では煙突が倒壊したが設備に大きな損傷はなく、1週間後に営業を再開した。断水で困っていた住民が、湯船を求めて50メートルの行列をなしたという。2人は「震災で疲労していた住民に癒やしを提供できてよかった」と懐かしそうに笑う。

♨スーパー銭湯に対抗、温泉掘り当て

 2002年、俊三さんが体調を崩し、賢嗣さん夫婦が実質的に経営を継いだ。市内でもスーパー銭湯が急速に台頭する中、対抗すべく温泉を掘り当てると「宮泉の湯」と名付けて、新設の露天風呂を満たした。

 毎月26日の風呂の日にはアヒルのおもちゃを湯船に浮かべる「あひる風呂」も設けた。12年には、浴場の水を肌触りのよい軟水に変える機械も導入した。

 しかし、ここ数年の苦境に設備の老朽化が追い打ちをかけた。万全の状態で客に風呂を提供できないのなら仕方がない。そう諦めて、閉じることを決意した。

♨「人生そのもの」

 「よく頑張ったね」「今までありがとう」

 閉店を知らせる紙を入り口に張り出すと、客から口々に言われる。常連客の女性(79)は「定休日以外は毎日通っている。一番落ち着く場所だった」と残念がった。

 賢嗣さんは「高校2年の時から手伝いをしてきて、大箇温泉は人生そのもの。いろいろなお客さんと交流できた日々はよい思い出になっている」。早苗さんは「最後まで最高の状態でお風呂を提供できるように頑張る」と力を込めた。

 営業は午後3時半~11時半。いずれも税込みで大人(中学生以上)450円(サウナ込み580円)、小学生160円、小学生未満60円。

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