「ピンク色のバッタを見つけました!」。神戸新聞阪神総局に1通のメールが届いた。送り主は、兵庫県西宮市立用海小1年の安田晴陽(はるひ)君(6)と、母の宏美さん(36)だ。写真には、確かにいちごミルク色に染まったバッタの姿がある。そして取材で驚いたのは、晴陽君の生き物に対する熱意や鋭い観察力。夏休みの自由研究も虫の図鑑制作に取り組むなど「生き物博士」への道を進んでいる。(久保田麻依子)
「カナヘビのびっくんとぶっくりくん。ニジイロクワガタ、スズムシもいるよ」。安田さん宅では現在、主に晴陽君が捕まえた昆虫や爬虫(はちゅう)類など16種類を飼育している。体の色や特徴から、名前が付いている生き物もある。
3歳頃まではダンゴムシを触るのも怖がっていたが、慣れてくるとカブトムシの飼育に挑戦。自宅近くの草むらや甲山、同県三田市内など自然豊かな場所で虫を捕るのが日課になった。
捕まえた生き物の生態は本や図鑑で調べて記録し、カナヘビやカブトムシを卵からかえすことにも挑戦した。宏美さんは「こまめな水分管理など、子どもの技量だけで難しいときは親の手も借りたりするが、責任をもって飼育することの大切さをじかに経験していて、命に思いを寄せる機会になっている」と感心する。
晴陽君がピンクのバッタを発見したのは今年8月末。甲山の近くでトウモロコシを収穫した際、茂みの中で目立つ色の虫を見つけた。「いつもと違う色だね」。捕獲して自宅で飼育すると3日後に脱皮し、ピンクがやや薄くなった。後日に見つけた別のバッタも薄いピンクで「ピンク茶色君とカラフル君」と名付けた。
同県伊丹市昆虫館によると、こうした現象は緑色の色素の欠乏による突然変異の一種で、100匹に1匹の割合で見られるという。昆虫館にも時々、発見の報告が寄せられるそうだ。
晴陽君が夏休みに取り組んだ自由研究のタイトルは「虫ずかん」。ジャコウアゲハの成長やノコギリクワガタの体の様子をダイナミックに描いたり、図鑑で調べたりした様子を写真で紹介した。ピンクのバッタは「ずかん」の収録には間に合わなかったが、脱皮した殻を保存するなど、丹念に資料収集している。
家族の目標は、管理が難しい冬場の虫たちの様子を観察したり、卵をかえしたりすること。「もっともっと虫を捕まえて観察したいな」。西宮の「小さなファーブル」、晴陽君の研究は、まだまだ続く。
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