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「歌は身体全体で表現する芸術。その力で融和の願いを届けたい」と話すYaeさん=大阪市北区
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「歌は身体全体で表現する芸術。その力で融和の願いを届けたい」と話すYaeさん=大阪市北区

 歌手の加藤登紀子さんの次女で、シンガー・ソングライターのYae(やえ)さんが3月12日、兵庫県西宮市の県立芸術文化センターで公演する。会場となる西宮は、環境保護を訴え続けた活動家の父・藤本敏夫さんの出身地。2002年に父が他界してからは遺志を継いで夫とともに千葉の農場を運営し、「半農半歌手」を自称する。父の故郷で、両親の魂を受け継いだ歌声を響かせる。

 Yaeさんは東京生まれ。2001年にアルバム「new Aeon(ニュー・イーオン)」をリリースしてデビューした。透き通った声を生かし、癒やしの作品を持ち味にしてきた。21年からは小林亜星さんの作詞作曲で、加藤さんが1970年から50年以上歌い続けてきた酒造大手「大関」(西宮市)のコマーシャルソング「酒は大関」を母から受け継ぎ、テレビなどで放映されて話題となった。

 政治、環境、文化と多彩な分野で持論を貫いた加藤さん、藤本さん夫妻の激論を、子どもの頃から身近に聞いて育った。「熱い家庭でした。子どもにはレベルが高すぎる議論が毎日展開されるんです。本当に議論が好きな両親だなと思いましたよ」と笑う。

 自然と両親の遺伝子を受け継いだ。洋の東西の文化を溶け込ませたヒット曲を生んだ母からは、海外音楽の魅力を教わった。学生運動を経て環境問題に目覚めた父からは、農業と生命の結び付きを学んだ。

 それらがミュージシャンとしての血肉になった。メロディーは母親譲り。北欧をはじめ世界中の民謡、ソウルミュージックがベースとなっている。歌詞は父親の思想が行間ににじみ、自然、大地の雄大さをつづる。

 20年にリリースした代表曲「On The Border(オン・ザ・ボーダー)」は語りかけるようなギターの旋律と、心に染み込むような歌声が印象的。

 ♪この世界の すきまに生まれおちた 無数の命♪

 ♪わたしのままで生きる あたらしい リアルに目覚める♪

 個人の自由や多様性を尊重する「リベラル」を追求してきた両親の思いを凝縮したような作品で、西宮の公演でも披露する。「音楽に国境はない。分断、対立が続く中、融和の思いを歌の力で伝えたい」とYaeさん。

 今回のコンサートのテーマは「土の上に生きる」。農業に人生をささげた父と重なる。「亡くなって18年、やっと父の信念が理解できた気がする。命の原点に大地がある。それを歌で、身体全体で訴えたい」

 午後4時開演。4千円、学生千円。芸術文化センターチケットオフィスTEL0798・68・0255。

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