性被害に遭った人たちを支える「性暴力被害者支援センター・ひょうご」(兵庫県尼崎市)が来月、設立10年を迎える。活動が知られるようになったこともあり、医療機関や学校から寄せられる相談件数は過去最多になる見込みだ。それでも「表面化しているのは氷山の一角」とメンバー。講座の幅を広げるなど、今後もサポート体制を強化していく。3月8日は「国際女性デー」。
「だいじだいじ どーこだ?いつも清潔に保ち、写真や動画は撮らない。見るのも触るのも自分だけ」
職員が絵本を使って語りかける。子どもたちは真剣なまなざしで見つめた。「もし誰かに見せるように言われたら『だめ、嫌だ』とはっきり大きな声で言って逃げ、助けてくれる大人に話そうね」
昨年9月、尼崎市立小田南生涯学習プラザで開かれた講座「はじめての性教育」。乳幼児と母親ら約20人が参加した。幼い子が性被害に遭うケースが後を絶たず「小学校までに性教育を伝えたい」と企画した。職員2人が講師を務め、口や胸、下半身といった「プライベートパーツ(ゾーン)」を子ども自身が特に大事にすることや、乳幼児にとって心地よい接し方などを伝えた。
同センターの前身は、2013年4月、神戸市西区の産婦人科に開設された「性暴力被害者支援センター・神戸」。実際に活動を始めると、成人女性だけでなく、子どもや男性が被害に遭っていることが分かったが、産婦人科は受診できない現実も見えてきた。
そこで幅広く対応できるよう、虐待対応に力を入れていた県立塚口病院(当時)と連携。15年には県立尼崎総合医療センター内に移った。周囲に知られず足を運びやすい病院や心理カウンセリングなどの支援を受けられる施設を紹介し、被害者をサポートしてきた。13年度に185件だった電話相談は増え続け、22年度は2月末時点で409件。過去最多を更新する見込みだ。
それでも「実態はまだまだ明らかになっていない」と担当者。そもそも被害者が性暴力と認識していなかったり、報復を恐れて言い出せなかったりすることなどが原因という。
同センターはこれまで、大人が正しい性の知識を学ぶ大切さを伝えてきた。今後は、加害者側の責任や「なぜ被害が起きたのか」といった視点を持った講演活動などに取り組む予定だ。昨年12月には支援情報サイトもリニューアル。学校で被害が起きた際に教員らが取る対応などについて詳しく掲載した。
性暴力被害者支援センター・ひょうご理事で産婦人科医の田口奈緒さんは「悩みを抱える人は決して一人ではないと伝えたい。一緒に考えるため、まずは気軽に相談してほしい」としている。
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