多岐にわたる巧妙な手口の特殊詐欺が頻発する中、窓口でお年寄りの被害を防いだとして、兵庫県警西宮署は尼崎信用金庫上ケ原支店（西宮市上ケ原八番町）に感謝状を贈った。警察はお年寄りらを中心に注意を呼びかけているが、金融機関や商業施設、コンビニ店などの協力は不可欠。被害を食い止めた同信金職員に当時の状況を聞いた。

　事案があったのは年の瀬も押し詰まった２０２２年１２月２２日の昼過ぎ。同信金の窓口で高齢女性が３００万円の出金手続きを申し出た。

　職員の山口真由さん（２４）は出金額の多さを不審に感じ、何に使うか女性に尋ねた。すると「息子から、仕事でお金が必要になったので本日中にほしいと言われた」と答えた。

　詐欺を確信した山口さんと上司の吉野祐介さん（４３）は女性を応接間に案内。「息子さんに確認した方がいいのでは」と諭したが、息子だと信じ切っている女性は「間違いない」と自信満々に答えるのみだった。２人は職員だけの説得に限界を感じて同署に連絡。女性は警察官が来るまで詐欺と気付かなかったという。

　山口さんは「違和感を覚えた時に聞き流すのではなく、少しでも不審に感じた場合は声をかけることが大切と思った」という。

　同署の幸福雄亮生活安全１課長（４３）は２人に感謝しつつ、窓口などに関わる人には「詐欺かと思った場合は遠慮せず、声をかけて警察に連絡を。その勇気で救われる人がいる」と呼びかけた。同署は「知らない電話には応対しない。ＡＴＭで還付金が支払われることはない。この二つを頭の片隅に置いてもらえれば、詐欺に遭うケースも大幅に減る」としている。