阪神

  • 印刷
「取得単位はぎりぎりだった」と学生生活を振り返る川口大介さん(左)と母智代美さん=尼崎市内
拡大
「取得単位はぎりぎりだった」と学生生活を振り返る川口大介さん(左)と母智代美さん=尼崎市内

 交通事故で高次脳機能障害を負った川口大介さん(22)=兵庫県尼崎市=が15日、4年間通った大手前大学(同県西宮市)の卒業式に臨む。体にまひが残り、集中力が保てないといったしんどさを抱えながらも、家族や大学職員、大好きな音楽に支えられて単位を取得。「諦めず頑張ってきてよかった。すがすがしい気持ち」。笑顔で門出を迎える。

 中学1年の夏、車にはねられ、頭を強く打った。意識は不明。母智代美さん(59)は医師から「今日、明日がヤマだ」と告げられたが約3カ月後、意識を取り戻した。

 しかし思うように体が動かせない。朝起きられず、中学校に通えたのは3年間で100日ほど。「外に出たくない」。智代美さんはリハビリができる病院や乗馬ができる場所を見つけては、ふさぐ大介さんを連れ出した。

 次第に進学意欲が湧き、全寮制の播磨特別支援学校(同県たつの市)へ入学した。初めて1人で洗濯し、母のありがたさを知った。周囲からは就職を勧められたが「自分を変えるには勉強しかない」と大学進学を希望。事故前に覚えたことを忘れていたり、新たに学んだことが定着しなかったりと困難もあった。前のめりになり過ぎて消灯時間後も勉強し、教員から叱られたこともあった。2019年春、頑張りが実を結んだ。

 高次脳機能障害は見た目に分かりづらく、サボっていると思われることもある。後遺症の残る口調に「酔ってる?」と言われたことも。つらい時はお笑いと音楽に癒やされた。好きなラップに思いを乗せて歌詞もつづった。

 歩きづらい、1時間半の講義に集中できないといったこともあったが大学に通い続けた。早朝や放課後に1人で勉強し、課題を提出した。卒業後は「食」の道に進むと決めていた。幼い頃、祖母に作ってもらった納豆巻きが好きだった。事故後、流動食生活が終わり、固形食を口にできた時、考えられないほどうれしかった。大学では多くの国の文化を学んだ。「障害のある人も外国の人も、いろんな人が来てゆっくりできるお店を持ちたい」

 4月からは調理の専門学校に進む。「健常者のように走ったり跳んだりはできないが、気持ちはしっかり、笑顔でいようと思う」と大介さん。目指すは「魚をさばけるモテ男」だ。

阪神
阪神の最新
もっと見る
 

天気(9月11日)

  • 30℃
  • 26℃
  • 60%

  • 31℃
  • 24℃
  • 60%

  • 31℃
  • 27℃
  • 60%

  • 31℃
  • 26℃
  • 60%

お知らせ