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中野堅三さん
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 自宅の庭に並ぶ無数の水槽で、体長2、3センチメートルの「宇宙メダカ」の子孫がすいすいと泳ぐ。「元気か。大きくなったね」。一匹一匹を柔らかなまなざしで見詰めながら優しく語りかけるのが日課だ。

 1994年に宇宙メダカの飼育を始めた。当時、宇宙や科学に親しむ「日本宇宙少年団六甲分団」に小学3年だった次男が所属しており、同分団が宇宙メダカの飼育希望者を募っていた。メダカの知識はなかったが、「親子で楽しめると思った」。宇宙を旅したヒメダカが帰還後に産んだ雌と雄の計4匹を譲り受けた。

 メダカの専門家から育て方を学んだ。水質を維持するために水をろ過する竹炭を水槽に浮かべたり、卵を産み付けやすいように丸めた毛糸を沈めたり、数々の工夫を重ねた。水道代の節約も考えて雨水で育てている。

 「見よう見まね。育てることに苦労を感じたことはない。餌を与える際、そばに寄ってくる姿がいとおしい。メダカに遊んでもらっている」と笑顔を見せる。繁殖活動を続けて約30年。これまでに数十万匹以上の宇宙メダカをふ化させた。現在も2千匹を飼育し、一番新しいメダカは43代目となった。

 2001年、宇宙メダカの愛好家らが集う「宇宙メダカ研究会」の関西支部長に就任した。繁殖させた子孫を全国の小中学校や福祉施設、子どもがいる家庭などに無償で提供している。「プレゼントした時の子どもらの喜ぶ顔が、何よりの励みになる」。地域住民との交流のきっかけにもなり、今では宇宙メダカの繁殖が生きがいだ。

 もうすぐ産卵シーズンが到来する。水温が15度以上となる春から秋にかけてピークを迎える。「日増しに暖かくなってきた。今年もどれだけの数の稚魚が生まれるのか、わくわくする」。80歳。(西尾和高)

【メモ】1994年7月、日本人初の女性宇宙飛行士・向井千秋さんとスペースシャトルで15日間宇宙を旅したメダカ4匹が無重力状態で産卵に成功。生殖実験で宇宙や帰還後にふ化したメダカを「宇宙メダカ」と呼ぶ。

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