余命半年の「オカン」を笑わせるため息子が漫才大会に出場する小説「尼崎ストロベリー」が話題だ。兵庫県尼崎市出身の落語作家・構成作家成海隼人さん(44)が実話を基に初めて書き上げ、3月初旬には劇が上演された。成海さんに生い立ちや尼崎、母への思いを聞いた。(池田大介)
1978年生まれ。小学生の頃、地元出身のお笑いコンビ「ダウンタウン」の漫才に魅了された。母親もお笑いが大好きでネタ見せ番組では「何が面白かったか」などを考察し合った。「笑いのスパルタ教育を受けました」
大学4年。芸人になるため吉本興業の養成所のパンフレットを取り寄せたが、直後に母の胃がんが発覚。介護や金銭面を考え、夢を諦め就職した。
「笑い」ががんに有効と聞くと、休日は母を吉本新喜劇や旅行に連れていった。「余命をはるかに超えて10年生きた。僕は笑いの力を信じています」
亡くなる直前、母親から「芸人になりたかったんやろ」「今からでもやってみたら」と言われた成海さん。32歳で養成所入学を決意し、志望理由書に「オカンの遺言」と記した。10歳下の同期に囲まれながら、作家コースで1年間、漫才やコントの脚本の書き方を学んだ。仕事もあり、通学は日曜日のみだったが、課題に真剣に取り組み、卒業時にあった大喜利の筆記試験はトップ成績だった。
卒業後は、月亭方正さんと落語の台本を作ったり、テレビ番組の企画を考えたりした。憧れていたお笑いに身を置く中で、自分の名前で小説を書きたいと思うようになった。
「貧乏したことも、これから起こるつらいことも全部笑いに変えて生きていけ」。母から言われ続けた言葉を胸に、商店街でコロッケを半分に割って一緒に食べた思い出や闘病体験などを盛り込んだ。自費出版だったが、尼崎の書店が特設コーナーを設けるなどして盛り上がり、舞台化が決定。3月4、5日、あましんアルカイックホール・オクト(昭和通2)であった公演はいずれも満席だった。
「舞台を古典落語のように5年、10年と続けて、オカンと過ごした尼崎の魅力を伝えていきたい」と話した。
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