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上品な駅周辺施設。漂う気品は、時が止まったようでもある=芦屋市船戸町(撮影・吉田敦史)
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上品な駅周辺施設。漂う気品は、時が止まったようでもある=芦屋市船戸町(撮影・吉田敦史)

 戦災や震災を乗り越え、100年かけて揺るぎないブランドを確立した兵庫県芦屋市。しかし少子高齢化に加えて20代の転出超過が続き、40年後には人口が3万人減ると予測される。費用対効果を重視し、物欲や出世欲が低いとされる20~30代の「Z世代」や「さとり世代」には「バブル期のような『高級志向』はもはや通用しない」と指摘する専門家も。「高級」だけでない、世代を超えて伝わる魅力を発信できるか。次の100年に向けた戦略が問われる。(村上貴浩)

 芦屋生まれの女子大学生(20)は、街にも自然にも愛着を抱く。ただ、住み続けたくても「地価や物価の高さは実感していて本当に住めるのか不安が残る」とする。

 2018年の20代の転出超過は244人。市の将来推計では同年から63年までに20代が2031人減り、現在約9万5千人の総人口も約6万5千人にまで減少すると見込まれている。

 市内で少年野球のコーチを務める男性会社員(39)=芦屋市=は「子どもが減って、合同チームがどんどん増えている」とこぼす。閑静な住宅街が広がる一方で「ちょっと外食に、と思っても気軽に入れる店がない」といい、「JR芦屋駅南側の再開発にも期待したけどゴタゴタが続いているし、若い世代を本気で呼び込もうとしていると思えない。ブランドにあぐらをかいている」と手厳しい。

 市は17年、市内外で芦屋のイメージ調査などを実施し、「市シティープロモーション戦略」を策定。交流サイト(SNS)を活用した発信の強化や「自校式給食」の魅力を描いた映画「あしやのきゅうしょく」製作などに取り組み、首都圏や近隣市へ「利便性や住みやすさ」をアピールした。

 ただ、他市と比べると、外部へのプロモーション不足やイメージの固定化が際立つ。

 22年4月から半年間に市が出した施策やイベント情報、民間との連携協定といったプレスリリースは1カ月あたり10件程度。人口規模の近い川西市のリリース量は2倍以上で、市内の自然環境やイベント結果を報告する内容まである。

 芦屋はテレビ番組や雑誌でも頻繁に取り上げられるが、多くが住宅街やレストランの高級さにスポットを当てたもの。「ブランドを築いてきたはずの文化や歴史が注目されづらい」と武庫川女子大学生活環境学部の三宅正弘教授(53)は指摘する。

 市内で生まれ育ったが、例えば清掃やニュースポーツの普及などに地道に取り組む市民の活動が伝えられていないと感じる。「高級さやブランドばかりがクローズアップされるが、今後必要なのは若者世代にとっても『暮らしやすいまち』の発信」と三宅教授。「そうでなければ20年後、30年後、芦屋ブランドは通じなくなる」と断言した。

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