スタンドも最後の最後まで共に戦い続けた。31日、西宮市の甲子園球場で開かれた選抜高校野球大会の決勝。地元報徳学園は高崎健康福祉大高崎(群馬)に2-3で敗れ、昨春の雪辱はかなわなかった。それでもレフトスタンド最上段まで埋めた緑の大応援団は、2年続けて夢の舞台を見せてくれたナインに惜しみない拍手を送った。「ありがとう」「いい試合やった」(浮田志保、池田大介)
試合は開始早々に動いた。一回表、1死から間木歩投手(17)とともに主将を務める福留希空(のあ)選手(17)がセンター前に今大会初安打。単身赴任先の三重県鈴鹿市から駆けつけた父譲二さん(64)は「やっと一本が出た。ここまでよく耐えた」と胸をなで下ろした。福留選手は安井康起選手(17)の適時二塁打で生還。相手の送球が乱れた間にさらに1点を加えると、スタンドの熱気は早くも最高潮に達した。
大会初戦前日、部員全員で円陣を組み、スタンドも含めた「全員野球」で頂点を目指すと誓った。応援団長の南翔天(しょうま)さん(17)と小川太志さん(17)は「昨年の決勝で涙をのんだ先輩の思いを胸に、今まで以上にたくさんの人を巻き込む」と一層気合を入れた。
だが、その裏に2点を返され試合は振り出しに。報徳は二、三回と走者を出すも続かない。逆に三回裏、健大高崎にワンチャンスをものにされ、勝ち越しを許す。好機にあと一本が出ず、重苦しい雰囲気が漂う中、五回裏には1死二塁から遊撃手の橋本友樹選手(16)が三遊間の打球を好捕し、流れを引き戻した。