地名は、その土地の長い歩みや物語を含んでいることが多い。「六甲」という漢字はいかにも意味がありそうに見える。いったい由来は何なのか。文字通りに読み取って「六つの甲(かぶと)? 兵士と関係がある? もしや兵庫ともつながりが?」などと考えたが、見当違いの可能性が大だった。
「そもそも『六甲』という漢字が後から付けられたものです。いろんな説はありますが、元々は大阪湾の方から見て向こうの方にあるから『むこ(う)山(やま)』などと呼ばれ、そこに当てはめられました。だから最初は『ろっこうさん』じゃなかったんですよ」
郷土史に詳しい神戸大学名誉教授の神木哲男さんは言う。かつて日本の中心は奈良や京都だった。もちろん神戸(兵庫)も港町として重要な拠点だったが、中心地から見ればやはり「向こう」。奈良や京都で書かれた文献が残り、伝えられ、後世に影響を与える。