阪神・淡路大震災の被災地には、震災の教訓を伝え、防災の知識を学べる施設がある。地表に現れた断層を保存したり、被災者が寄せた資料を展示したりしてそれぞれ災禍の記憶をつなぐ。当時を知る人たちは経験を語り、犠牲者を悼んで施設周辺を整備するグループも。原点にある思いはみんな同じだ。あの日を忘れず、次の災害への備えに生かしてほしい-。

阪神高速の橋脚、生々しい傷痕 震災資料保管庫(神戸・東灘区)

阪神・淡路大震災で壊れた阪神高速道路神戸線の橋脚=神戸市東灘区深江浜町(撮影・斎藤雅志)

 巨大なコンクリートの柱に亀裂が走る。数メートルあるひび割れは阪神・淡路大震災の激震によって生じた。頑丈な柱の内部にまで及ぶ。

 31年前の震災で甚大な被害を受けた阪神高速道路(大阪市)。この柱は、西宮市を通る阪神高速神戸線の橋脚の一部だった。現在は震災で損壊した構造物34点を保存する同社の震災資料保管庫(神戸市東灘区)で、地震の破壊力を伝える。

阪神・淡路大震災で曲がった橋脚内部の鉄筋=神戸市東灘区深江浜町(撮影・斎藤雅志)

 阪神・淡路は高速道路の安全神話を一瞬にして崩壊させた。神戸線は同市東灘区で635メートルにわたって横倒しになり、湾岸線を含め神戸・阪神間の計5カ所で落橋。車が滑り落ちるなどし、16人が犠牲になった。

 大破した構造物の保管施設は1999年に完成したが、当初、見学は社員や研究者らに限っていた。震災15年に合わせて2009年12月に展示をリニューアルし、安全の原点を見つめ直す場として震災による生々しい傷痕を一般公開した。

破損した高速道路の一部=神戸市東灘区深江浜町(撮影・斎藤雅志)

 「損壊状況は実験室でも再現できない。震災のリアルな恐ろしさを色あせずに伝えている」。同社技術部長の伊藤学さん(58)が静かな口調で語る。

 円形の橋脚は、つぶれてちょうちん形に変形した状態のまま展示する。厚さ35ミリの鉄板を別の部材が突き破った橋桁も並ぶ。

 社内では震災後に入った社員が8割を超え、入社から数年の若手社員も見学者の案内を担う。伊藤さんは「当時の状況を誰かに説明すると、震災をより自分事に捉えられる」と考える。

 物言わぬ構造物があの日の衝撃を伝え続ける。(田中宏樹)

震災資料保管庫(神戸市東灘区深江浜町11の1)

 阪神・淡路大震災で損壊を受けた阪神高速道路の構造物34点を並べる。3号神戸線と5号湾岸線を再現し、橋脚や橋桁の被災状況を色分けして細かく示したジオラマ展示も目を引く。

 無料。開館は毎月第1、3水曜と日曜。見学は10日前までの予約が必要。各日午前10時か、午後1時半から。一般財団法人阪神高速先進技術研究所TEL06・6244・6049

【備える】実践的な防災研究を推進 人と防災未来センター(神戸・中央区) 

 阪神・淡路大震災の教訓を伝える「人と防災未来センター」(神戸市中央区)は、実践的な防災研究の推進を役割の一つに位置付ける。宮崎県出身の主任研究員、山崎真梨子さん(44)は災害時の要配慮者支援を専門とし、阪神・淡路の被災地で得た学びを地元宮崎で開くワークショップなどで還元する。

 同センターには現在、主任研究員3人、研究員5人が所属。それぞれの専門分野について研究する。