無期懲役の確定から26年を経て裁判をやり直す再審の開始が決まった。無罪の公算が大きい。しかし、最も喜ぶべき本人は服役中に病死している。取り返しのつかない司法の汚点と言わざるを得ない。
滋賀県日野町で1984年、酒店経営者が殺害され金庫が奪われた日野町事件の第2次再審請求で、最高裁第2小法廷は検察側の特別抗告を棄却し被告だった故阪原弘(ひろむ)さんの再審開始を認めた。死後再審が認められるのは1953年の徳島ラジオ商事件に次ぎ戦後2例目とみられる。
2次にわたる請求審では、再審制度の課題が浮き彫りになった。真摯(しんし)な反省を踏まえた改正が不可欠だ。
再審開始の決め手になったのは、阪原さんが遺体や金庫の遺棄状況を説明した実況見分の様子を収めたネガフィルムだ。第1次請求審までは迷いなく案内したように見える写真のみ提出された。これに対し、裁判所などの求めにより第2次請求審で開示されたネガには再現を何度もやり直した様子が含まれ、捜査側による誘導がうかがえた。
阪原さんは遺族による第2次請求の前に亡くなった。早期にネガが示されていれば生前に無罪判決を聞けた可能性がある。
法制審議会が2月に答申した再審制度の改正要綱は裁判所が検察に証拠開示を命令できる規定を盛り込んだが、開示の範囲は「請求理由に関連する証拠」に限った。これでは裁判所の裁量次第で重要な証拠が出なくなる恐れがある。
日野町事件では警察が過酷な取り調べで虚偽の自白を強いた可能性が指摘され、公判では供述内容の矛盾が次々と明らかになった。実況見分の様子は有罪の最大の根拠とされたが、それを覆すネガが長期間示されなかったのは「証拠隠し」の非難を免れない。幅広い証拠を早期に開示する制度改正が必須だ。
再審請求の長期化の要因とされる検察による不服申し立ても、日野町事件では2度も繰り返された。2018年に大津地裁が言い渡した最初の再審開始から、最高裁による確定まで7年半もの歳月を要した。
法制審の審議では、検察の不服申し立てについて日本弁護士連合会の委員が禁止するよう強く求めたが、検察官や学者の委員らの反対で維持された。国会の責任で不服申し立てを禁止する法改正を実現すべきだ。
日野町事件では最高裁で審理した3人の裁判官全員が再審開始を支持した。地裁、高裁も再審を認めており、審理は尽くされたとみるべきだ。検察は再審公判では有罪立証を断念し、一刻も早く無罪を確定させ、阪原さんや遺族の名誉回復を図らなければならない。

























