兵庫県丹波地域で恐竜化石が見つかるようになったのは、今から18年余り前のことです。2006年、地元で活動していた地学愛好家の発見がきっかけとなり、恐竜をはじめとした多くの化石が見つかり始めました。これら篠山層群の化石は、白亜紀中頃に起きた脊椎動物の適応放散に関する極めて重要な情報を与えてくれます。
06年に丹波市で発見された恐竜化石は「丹波竜」という愛称で親しまれ、14年に新属・新種の竜脚形類だと判明し「タンバティタニス・アミキティアエ」と名付けられました。タンバティタニスは「丹波の巨人」を、アミキティアエは「友情」を意味します。当時、発掘調査を指揮し、タンバティタニスの研究を行ったのは、ひとはくの古生物学者、三枝春生先生でした。三枝先生は22年にお亡くなりになられるまで、篠山層群での数々の発掘調査を先導されました。
タンバティタニスが発見された翌年の07年、今度は隣の丹波篠山市で小型の恐竜化石が発見されました。09年にはこの化石が角竜類のものだとわかり報道されました。巨大なタンバティタニスに対し、この角竜類は全長約80センチと推定される小さな恐竜です。この化石のクリーニング作業には非常に長い時間がかかり、24年、新属・新種の角竜類だと判明して「ササヤマグノームス・サエグサイ」と名付けられました。ササヤマグノームスは「篠山の地下に隠された財宝を守る小人」を意味し、サエグサイは三枝春生先生に献名(けんめい)されたものです。
丹波の巨人・タンバティタニスと篠山の小人・ササヤマグノームスは、どちらも約1億1千万年前の丹波地域に生息していた植物食恐竜です。しかし、それぞれの化石を詳しく調べてそのルーツを探ると、面白い違いが見えてきます。タンバティタニスはタイやラオス、中国などアジアの仲間に近縁なのに対し、ササヤマグノームスは中国だけではなく北アメリカの仲間にも近縁だということが分かりました。これは、タンバティタニスはアジアで独自の進化を遂げた恐竜である一方、ササヤマグノームスは新大陸を目指してアジアを出発し、長い旅に出たグループに近縁な恐竜だったということです。
化石は、はるか昔の生き物たちの記録を私たちに教えてくれます。そして発掘調査は、どんな発見があるのかというワクワクに満ちています。兵庫の化石についてもっと知りたい方、ぜひ博物館に遊びに来てくださいね。皆さんのお越しをお待ちしております。