創刊から３号目を迎えたローカルマガジン「虎猫思想」。兵庫県宍粟市を中心に地域の魅力や取材相手の深い心情を伝える記事が満載だ。市内の公共施設などで無料配布し、好評を得ている。だが「書くのは怖い。もっと上手な表現があったかも、書き足りないことがあったかも…。そんな気持ちばっかり」と謙虚な姿勢を崩さない。

　高松市出身。東京の専修学校を卒業後に就職したが、家庭の事情で子ども２人を連れて同市に戻った。そこで勤めた編集プロダクションで取材や執筆の基礎を学び、２００３年に編集制作プロダクション「フュージョンファクトリー」を創業。企業や大学の情報誌などの取材、編集、制作を担った。

　２０年１月、参加した移住フェアで宍粟市に好印象を持ち、同年１１月に全従業員３人で同市千種町七野に移住してサテライトオフィスを開設。住民と交流する中で「地域の良さが上手に宣伝できていない」と虎猫編集室を設立し、今年２月に創刊した。「地方では紙で情報を知る人が多い」と紙媒体にこだわった。

　これまで養鶏農家や料理人など市内で躍動する住民らを紹介。取材対象の秘めた思いをすくい取り、平易な文体で読みやすい記事を心がける。単語の使い方や表現方法は細部まで注意を払い、「例えば料理なら単に『おいしい』とは書かず、具体的に伝えるようにしている」と力を込める。

　今でも「現場」が好きなのは変わらない。「住民の活動を応援できるような芯のある情報誌にしたい」と取材に赴く。（村上晃宏）