都湯5代目店主の宮崎一一さん
都湯5代目店主の宮崎一一さん

 きれいに磨かれたタイル張りの風呂場。脱衣場には年季の入った体重計や木製ロッカーが並び、まるで昭和のころに戻ったような雰囲気だ。今年で創業105年。兵庫県相生市内唯一の銭湯を、妻の悦子さん(73)と週5日営む。

 客は1日20人弱で、多くが近所の高齢者という。重油の価格高騰もあり、利益はほぼないが、「『ええ湯やった』と喜んでもらえるだけで十分」とほほ笑む。

 「都湯」は、相生に旧播磨造船所(現IHI相生事業所)が創設された2年後の1918(大正7)年、祖父が創業した。高度成長期は「従業員で芋の子を洗うようだった」というが、80年代に入ると造船業が衰退。家庭にも風呂が普及し、次第に客足が遠のいた。

 9年前に都湯を営む母と弟が相次いで他界。「続けてほしい」という地域の声に押され、本業の海鮮料理店との掛け持ちで受け継いだ。だが、2018年に胃と食道にがんを発症。手術は成功したが、体力的にも潮時と考えていた。

 そんな時、支えてくれたのは常連客だった。交流サイト(SNS)でPRしてもらい、県外からの来客も増えた。事情を知り、湯船に浮かべるユズやショウブを大量に送ってくれた人も。「息切れするまで頑張らなしゃあない」。温かい支援にそう決意した。

 「一緒に入れば、誰とでもすぐ友達になれるのが銭湯。そんな思い出の一ページを、一人でも多くの人に残したい」。営業は午後4時半~8時。月曜と木曜休み。毎月26日は親子無料。都湯TEL0791・22・6108

(地道優樹)