1年間の全寮制男子校「県立山の学校」(兵庫県宍粟市山崎町五十波(いかば))で23年続いた行事「千種川沿い縦走」が、本年度から姿を消すことになった。千種川の源流から河口まで70キロ以上を2泊3日で歩き、仲間との絆や忍耐力を育んでもらうための恒例行事。しかし生徒数の減少に伴い時代に合ったカリキュラムに見直すため、終止符を打つことを決めた。(村上晃宏)
県立山の学校は1993年1月に創立。15歳から20代までが林業・造園実習などを学び、希望者は同校連携の通信制高校に在籍し、高校の卒業単位の一部として認められる。
千種川沿い縦走は99年から始まり、近年は6月ごろに実施していた。昨年は三室山登山口駐車場(宍粟市千種町河内)から、佐用、上郡町を経て、赤穂海浜公園(赤穂市御崎)まで77・1キロを踏破した。
生徒たちは、歴代卒業生の名前が記されたのぼりを手に歩き、同公園近くの県内一低い唐船山(標高19メートル)頂上で、受け継がれてきた横断幕を掲げるのが恒例。同校の記念誌には「しんどかったけど、歩ききった後の達成感は大きなもの」と、生徒の感想がつづられており、思い出深い行事だったことがうかがえる。
だが近年、同校の入学者は1桁の状況が続く。このため同校は、より生徒たちの技能やコミュニケーション力を高めるため、カリキュラムの見直しに着手。地元企業での職場体験の選択肢を増やしたり、市民との交流を図るため市内の催しでブースを設けたりする取り組みを進める中で、縦走の廃止を決断した。
同校によると、生徒の体力づくりのために実施している県内最高峰・氷ノ山の登山や、山城を巡って地域の歴史を学ぶ授業などは継続する予定という。
長年続いた縦走をやめることについて、田中裕一学校長は「心苦しく思っている」と心情を吐露。一方で学校の創立当時と比べ、生徒たちの事情も取り巻く環境も変化しているといい、「カリキュラムを見直し、生徒たちが社会に適応するための教育を充実させていきたい」と話した。