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竹べらを横向きに打ち込み、樹皮をむくための穴を開ける参加者たち=佐用町下石井
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竹べらを横向きに打ち込み、樹皮をむくための穴を開ける参加者たち=佐用町下石井
ヒノキの樹皮をつかみ、かけ声とともに下から引っ張り上げて皮をむく=佐用町下石井
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ヒノキの樹皮をつかみ、かけ声とともに下から引っ張り上げて皮をむく=佐用町下石井
1年間木を乾燥させた後、チェーンソーで伐採する(森の蘇り提供)
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1年間木を乾燥させた後、チェーンソーで伐採する(森の蘇り提供)
間伐材をつかってお箸作りに取り組む参加者=佐用町平福
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間伐材をつかってお箸作りに取り組む参加者=佐用町平福
三山茂夫さん
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三山茂夫さん

 町面積の8割以上を山林が占める兵庫県佐用町には、高齢化などのため、手入れの行き届いていない山がたくさんある。そんな中、「山の健康」を守るため、子どもや女性でも楽しく作業できる「皮むき間伐」プロジェクトが同町で始まっている。静岡県のNPOが全国展開する事業の一環で、昨年、このプロジェクトを取り入れた事業プランが、町主催のビジネスプランコンテストで最優秀賞に輝いた。8月に町内で開かれた体験会を取材し、山の現状や今後の課題を聞いた。(勝浦美香)

 「レッツきらめ樹(き)!」。8月上旬、佐用町下石井の山林ににぎやかなかけ声が響いた。天辺が見えないほど高いヒノキの樹皮を参加者たちが下から引っ張り、うまく力を加えてむき上げてゆく。10メートルを超える高さまで皮がめくれてちぎれると、地上からは歓声が上がった。

 皮をむいたスギやヒノキは約1年間そのまま乾燥させて枯らし、軽くなってから伐採する。立ったまま自然乾燥させた木は香りや材質もいいため、切り倒した後は間伐材として利用、販売する予定という。

 「きらめ樹」と名付けられたこの事業は、静岡県のNPO法人「森の蘇(よみがえ)り」が、日本の山林を守るために始めた取り組みだ。佐用などで地域の活性化に取り組む「地域再生研究所」(同町平福)の三山茂夫さん(74)は、取り組みに深く共感し、町内でも同じことができないかと模索。同法人の研修を受け、今年5月から佐用での体験会を催している。

 2回目の体験会となったこの日は、鳥取県智頭町で木工所を営む和田康平さん(35)を講師に招き、皮むきのほかにも、山や木材の現状を知る座談会、間伐材を使ったワークショップを開いた。

 和田さんは、間伐の意義について参加者に語りかけた。「手入れの行き届いていない人工林では、密生したスギやヒノキが太陽光を遮ってしまう。まずは山に光を入れてあげることが、何より大事なんです」

 太陽光が遮られると、雑草や低い木が生えにくくなり、土地が痩せる。そうなると土砂崩れが起こりやすかったり、野生動物のすみかが奪われたりと悪影響にもつながるという。

 皮むき作業は三山さんが所有する山で実施した。まずは面積や木の本数、幹の周長を調べ、間伐が必要かどうかを見極める。太く真っすぐな木はできるだけ残すように選別してから、いざ皮むきへ。竹べらを駆使して地上1メートルほどの高さまでむいてしまい、その後、6~7人で皮すそを持ち、一気に上に引っ張り上げる。岡山県津山市から参加した男児(6)も「上の方までむけるのが楽しい」と次々と皮を引っ張った。

 特別な道具や技術がいらない皮むき間伐は、子どもや女性にも参加しやすく、兵庫県内各地で体験会が開かれているという。「多くの人が参加できる皮むき間伐だからこそ、今後は地域の若者や高齢者も巻き込んで広げていきたい」と三山さん。皮むきは秋冬がシーズンオフのため、佐用での次回開催は来春を予定しているという。

     ◇

■県西・北部豪雨契機に活動 三山さん、「強い山」を目指し尽力

 佐用で皮むき間伐を始めた三山茂夫さんに話を聞いた。

 炭焼きの仕事をしていた祖父と一緒に、幼い頃から山に親しんだ。兵庫県姫路市で広告の仕事に就いてからは、漁業関係者と仲を深める機会もあった。「山が痩せたら海も痩せるんや」。そんな話を聞くたび、古里・佐用の山を思った。

 大きなきっかけとなったのは2009年8月の県西・北部豪雨。山あいの実家の前には、小さな橋が架かっていた。大雨により、山から流れてきた木や泥が橋に詰まり、実家は床上まで浸水。幸いにも同様の被害に遭った家は他になかったが、「このままではいけない」と強く思った。

 「森の蘇り」の活動を知ったのは2年前。その目的や皮むき間伐の効果に感激し、佐用町でも広げるべく準備をしてきた。5、8月の体験会で皮をむいたスギ、ヒノキは来年の秋ごろに伐採する。伐採、製材も町内の会社に頼み、ブランドイメージをもたせて販売する。もっと地域に広げていきたいので、協力してくれる山林所有者を募っている。

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