山陽電車播磨町駅から北へ徒歩5分、山陽新幹線の高架沿いにどこか懐かしいたたずまいの店舗がある。タイル張りの壁に「COFFEE」の文字。店内に入ると、香ばしいコーヒーの香りに包まれる。店長の田村寿之さん(43)によると「シェアカフェ」と呼ばれるスタイルで、9人のバリスタが日替わりでカウンターに立つ。それぞれ独立開業などを目指しており、田村さんは「コーヒーに特化したシェアカフェは全国でも珍しいのではないか」と話している。(斎藤 誉)
店の名は「コーヒーロースターズハブ」(兵庫県播磨町南大中2)。カフェの開業には、必要な機材を買ったり、場所を確保したりと、いくつものハードルがある。田村さんによると、開店しても、ほとんどの店が10年以内に閉店するという。
田村さんは、自家焙煎(ばいせん)したコーヒー豆を業者や個人に販売する店を加古川市の自宅で営む。ハブは「バリスタ育成」を掲げて昨年10月に開いた。「お金を借りて店を始めても、うまくいかないことが多い。(シェアカフェで)やりがいや難しさを感じてもらいたい」と店の狙いを語る。
業務を体験してもらうことが主眼なので、バリスタは1日あたりの出店料2千円とコーヒー豆の使用料だけで参入できる。4月時点で、20代の学生から50代の社会人まで男女9人が日替わりで店頭に立っている。
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明石市の会社員志村友美さん(40)はケアマネジャーが本業。2月末から木曜日に店に立つ。
目標とするカフェは、車椅子でも入りやすいバリアフリーの店。介護の仕事を通じて、喫茶店に行きたくても遠慮してしまう高齢者を多く見てきたという。外出が難しい高齢者のために、キッチンカーで施設を巡るスタイルも模索しており、夢は膨らむばかりだ。
志村さんは、飲料会社勤務だった父の影響で、幼少期からコーヒーが身近だった。喫茶店の落ち着いた雰囲気が好きで、自宅には家庭用のエスプレッソマシンなどもそろえ、コーヒー表面にイラストを描く「ラテアート」も習った。
「嫌なことがあっても、心が落ち着く」とコーヒーの魅力を語る。店では、コーヒーに加えて、出身地である姫路市発祥とされるアーモンドトースト(550円)を提供するなど、オリジナルメニューで地域色を打ち出す。
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水曜日にコーヒーを振る舞っていた30代女性「ヨンナー」さんも目標はカフェ開店。元々は田村さんの店で豆を買う愛好家だった。
ブレンドの注文を受けると、客の目の前で豆を粉砕してドリップし、一杯のコーヒーが出来上がる工程をじっくりと見せていく。客と向かい合って入れるのが基本といい「元々人と話すのが得意ではなく、目の前で入れるのは緊張するけどトレーニングになる」とヨンナーさん。半年を経て、4月で店を「卒業」したが、接客の楽しさを実感できたという。
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バリスタが入れ替わるスタイルは利用客にとっても新鮮なようで、播磨町に住むコーヒー愛好家の公務員古場大聖さん(23)は「コーヒーが好きなバリスタと話ができて楽しい。日を変えればメニューや使う器具が変わり、個性があって面白い」と話す。
まだ、独立したバリスタはいないが、田村さんは「ここをハブ(中継点)に、それぞれの夢に飛び立ってほしい」と話す。4月末にはバリスタが肩を並べてコーヒーを振る舞う飲み比べイベントを開催し、コーヒーを通じた交流の輪を広げている。























