知事選「あなたの?に答えます」
【質問】夕方などにテレビを見ていると、大阪府の吉村洋文知事(45)がしょっちゅう出演しています。兵庫県も大阪と同等に新型コロナウイルスの感染拡大が深刻だったのに、井戸敏三知事(75)が出演している姿はあまり見掛けません。なぜなのでしょうか。
大阪府が公表している知事日程によると、コロナが拡大して以降、吉村知事のテレビ出演はリモートも含め150回以上に上ります。「テレビ局から依頼があり、公務の日程が空いていたら出る」とのことです。
テレビ出演は府の感染拡大や医療逼迫の状況などを伝え、感染対策を呼び掛けるのに絶大な効果があります。元毎日放送プロデューサーで、同志社女子大学の影山貴彦教授は「吉村さんがテレビに出ているのは、大阪維新の会を創設した橋下徹さんの流れが大きい」と話します。
ただ、影山教授によると「吉村さんは最初コメントが固くて、橋下さんほどメディアの使い方はうまくなかった」。コロナ禍で出演が増える中で「ハイヒールのリンゴさんのような芸能人に『もっと柔らかく』『具体的に』などと突っ込まれて力を付けた」といい、視聴者受けも良くなって、各局がこぞって依頼するようになったと分析します。
影山さんは「コロナ禍で自治体の首長が私たちに向けてテレビで情報発信することは、インパクトもあって良い」と評価する一方、「テレビが競うように吉村さんを出演させすぎではないかとも思いますね」とも話しました。
一方、テレビ出演について井戸知事に文書で質問したところ、回答がありました。井戸知事は「各自治体の長が連日コロナ対応を行う中で、在阪テレビ局と物理的な距離が近い大阪府は、他府県の知事に比べて出演が容易なのではないか」との見方を示しました。井戸知事も、兵庫県内のNHKや地元テレビ局には出演しています。
その上で、井戸知事は「記者会見や囲み取材の対応は積極的に行っており、テレビ出演のみで情報発信を論じるべきではない」と主張。さらに「制度や施策の枠組みが固まらない段階で拙速に発信するより、枠組みをしっかり固め、網羅的に整えた正しい情報を適時適切に発信すべきだ」と訴えました。
影山教授に井戸知事の出演が少ない理由を尋ねたところ、「過去に失言をしたこともあり、井戸さんはメディアの使い方が決して上手ではない印象があります」とのことでした。さらに影山教授は「政治生活も終盤の中、これ以上メディアで攻勢に出る必要はないと判断したのでは」とみています。
(小谷千穂)
2021/6/10