アリーナの外観イメージ(NTT都市開発提供)
アリーナの外観イメージ(NTT都市開発提供)

 神戸市が、ウオーターフロントの夜間観光の充実に本腰を入れている。近年の再開発で、午後8時までの水族館やホテルが開業。来春には「神戸ポートタワー」がリニューアルオープンし、バーも登場予定だ。さらには2025年、コンサートやスポーツを楽しめるアリーナもできる。海上花火大会も秋に衣替えし、「夜の港」を神戸観光の切り札に-。狙いはずばり、「インバウンド(外国人観光客)」需要という。(霍見真一郎)

 神戸市がインバウンドを強く意識するようになったのは、19年のラグビーワールドカップ日本大会だった。試合終了後の神戸・三宮には外国人の姿があふれ、夜の街は活気で満ちた。

■大阪より西

 同市によると、同年の外国人観光客の市内宿泊者数は延べ約74万人。前年を10万人近く上回った。そもそも、同市調査では、神戸観光は日帰り客が約8割。宿泊が伴う場合の観光消費額は、日帰り観光の約4倍に及ぶというが、外国人宿泊客となれば、国内日帰り客より消費も期待できる。

 ところが同じ年、京都市の外国人宿泊客は約606万人と神戸の8倍超、大阪市は約1423万人と19倍超もいた。桁違いだった。

 神戸市観光企画課の和田大輔係長は「ゴールデンルートの影響もある」と指摘する。ゴールデンルートとは、外国人観光客が東京から入国し、富士山、京都、大阪と巡り、関西空港から帰国する定番経路のこと。神戸市は、関西万博や神戸空港国際化も見据え、「大阪より西への外国人観光客の誘引」に狙いを定めた。そのためには、神戸のナイトタイムを強力にPRすることが不可欠になる。

■海辺を刷新

 どうすれば外国人観光客に夜を過ごす街として選ばれるか。日本三大夜景で有名な六甲山からの眺めはあるものの、現時点では山上への足という課題がある。

 そこで目を付けたのが、神戸港だった。街に近く夜景も楽しめ、外国人に人気の神戸ビーフを近隣で楽しんでもらうこともできる。

 大規模リニューアル中のポートタワーは来春、地上約100メートルの屋上に360度見渡せる展望エリアが新設され、夜はバーになる店も登場する。営業時間も、午後11時まで延長を検討する。展望施設の運営業者は年間入場者数をコロナ前の約33万人から約45万人に増やすことを目標に掲げる。25年開業予定のアリーナは、約1万人収容でき、スポーツだけでなくコンサートなどにも活用予定。イベント後の観客を、夜の海に誘導することも見据える。

■夏以外にも

 魅力のてこ入れは空からも。「みなとこうべ海上花火大会」は今年、10月の平日5日間に連日約10分間打ち上げるイベントへ移行が決まった。昨年の代替イベントが好評だったという。

 一時は1万5千発打ち上げていた花火だが、1日700発となり、玉も小さくなる。しかし、同市港湾局振興課の山本耕太担当係長によると、約800メートル離れていた打ち上げ場所は昨年から約140メートルまで近づき、市が昨年実施したアンケートでは8割が演出を評価した。酷暑の雑踏で長時間待つ必要はなく、ベビーカーを押す母親の姿もあった。「ゆったり見られた」との声もあったほか、花火後に半数が外食を予定しており、宿泊予定者もいた。

 タワーやアリーナ、そして花火。これらは、大阪に宿泊していた外国人を神戸に誘う特別感を醸し出す。市は今年、サプライズ花火を度々打ち上げており、場の盛り上げに躍起だ。夏だけでなく、年中「アツい場所」になれるかは、これからが正念場だ。