県知事選の出陣式で支援を訴える斎藤元彦氏=2024年10月、神戸市中央区
県知事選の出陣式で支援を訴える斎藤元彦氏=2024年10月、神戸市中央区

 多くの兵庫県民に衝撃を与え、斎藤元彦に目を向ける一つのきっかけとなったのは元県民局長の死だ。自死とみられるが、なぜ亡くなったのか、本当の理由は分からない。このため、神戸新聞を含む多くの報道機関が具体的な理由を報じることはなかった。結果として人々が求める答えは紙面になかった。

 一方、斎藤のパワハラなどの疑惑は連日のように報じられる。県民局長の死とパワハラ。二つを結びつけるような言説がネット世界を中心に飛び交った。

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 神戸市西区の横山新一(76)は昨年末、長年親しんできた神戸新聞の購読をやめた。「報道が間違っている」と感じたからだ。

 「兵庫県議会が斎藤元彦知事への不信任を決議」。9月にテレビのニュースで告発文書問題の報道に触れて以来、疑問に思ってきたことがある。告発者の元県民局長はなぜ死ななければならなかったのか。知事の斎藤はなぜ責任を取ってやめないのか。

 横山は新聞やテレビのニュースを日々、追いかけながら、納得できる答えが見つからないことに不満を募らせる。やがて息子から薦められてユーチューブを見るようになった。そして、斎藤のパワハラが局長を追い詰めたかどうかが一つの焦点だ、と思った。

 大手建材メーカーの営業畑で40年間勤めた横山は、監査役を最後に67歳で退職した。各地で支店長を務め、大勢の部下と接してきた経験から、人を見る目には自信があった。「パワハラは体質的なもの。実際に対面すれば本当かどうか分かる」。斎藤はどうなのか、自分の目で確認しなければならない。