板橋の体が震えた。女子シンクロ高飛び込み決勝。荒井との4本目の試技を終えると、馬淵コーチの表情が明るい。いつもはあえて電光掲示板を見ない板橋だが「今、いい順位なんだな」と気付いてしまった。
暫定3位で迎えた最終5本目。高難度の後ろ宙返り2回半1回半ひねりえび型(5253B)に挑んだが、板橋は回転しすぎて入水時にしぶきを上げた。表情をゆがめ、手で顔を覆った。
4本目の前宙返り3回半えび型(107B)では2人の動きがそろい、70点台に伸びただけに惜しい結末。板橋は「きょうは父の誕生日。メダルを掛けてあげたかった」と涙を流した。
荒井は5月のワールドカップ高飛び込みで、個人種目では日本史上初の銀メダル。国内第一人者も「体が動きすぎた。悔しい」と目を潤ませた。
柔道出身の両親を持つ板橋は筋肉質で、きっちりした性格。1学年下の荒井は細く、マイペース。「正反対の2人。でも飛んだらすごく合って見える」(板橋)のが強みだ。JSS宝塚での厳しい練習にも励まし合い、世界6位に上りつめたペア。挑戦はまだ終わらない。(藤村有希子)
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