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ラストランを終えた小林祐梨子さん(手前右)に視線を送る田中希実(左)。1500メートルの新旧日本記録保持者となるのは5年後のことだ=2015年2月、加古川市の加古川河川敷
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ラストランを終えた小林祐梨子さん(手前右)に視線を送る田中希実(左)。1500メートルの新旧日本記録保持者となるのは5年後のことだ=2015年2月、加古川市の加古川河川敷
赤い鉢巻き、赤いユニホーム姿でたすきをつなぐ大阪薫英女学院高時代の前田穂南(左)=2015年2月1日、加古川市の加古川河川敷マラソンコース
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赤い鉢巻き、赤いユニホーム姿でたすきをつなぐ大阪薫英女学院高時代の前田穂南(左)=2015年2月1日、加古川市の加古川河川敷マラソンコース
兵庫県郡市区対抗駅伝で洲本市の男子1区を担い、トップで2区に中継する坂東悠汰(中央)=2017年2月、加古川市の加古川河川敷マラソンコース
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兵庫県郡市区対抗駅伝で洲本市の男子1区を担い、トップで2区に中継する坂東悠汰(中央)=2017年2月、加古川市の加古川河川敷マラソンコース

 寒風が吹きすさぶ加古川河川敷に、1人のオリンピアンと、その候補者たちが集結していた。

 2015年2月1日。兵庫県加古川市の加古川河川敷で男子第69回、女子第30回の兵庫県郡市区対抗駅伝が開かれた。「駅伝王国」と呼ばれる兵庫の中学生、高校生、大学生、実業団、一般市民の健脚自慢が地域別にたすきをつなぎ、頂点を目指す。真剣勝負ではあるが、お祭り的なムードも漂う一大イベント。年末から年始にかけての全国中学駅伝、全国高校駅伝、全日本実業団対抗駅伝、東京箱根間往復大学駅伝などで脚光を浴びたランナーたちが故郷に戻ってチームを編成するだけに、レース当日は陸上ファンを中心に河川敷周辺が盛り上がる。

 例年以上に注目を集めた大会だった。

 長らく日本女子中長距離界をけん引し、大会前に現役引退を表明した北京五輪5000メートル代表の小林祐梨子さんが“ラストラン”に選んだのが「小野市女子代表」としての郡市区対抗駅伝だった。そして、同じチームには当時、小野南中3年の田中希実がいた。

 田中は中学生区間の3区3キロで10分切りの好走を見せ、チームは4区でトップに。アンカーの小林さんは3位に順位を落としたが、万雷の拍手を浴びながらフィニッシュし、兵庫陸上界の「顔」としての役目を終えた。「小林さんの最後の走りをいい思い出にしたかった」と話した田中はその後、小林さんが持つ1500メートルの日本記録を更新。小林さんから託された「兵庫の顔」としての“たすき”を握り締め、東京五輪代表に駆け上がった。

 尼崎市の女子1区は大阪薫英女学院高3年の前田穂南だった。3年ぶりの出走で1区6キロを先導し、2位で中継。総合10位に貢献し「レースを楽しめた。将来はマラソンで世界と戦いたい」と抱負を語った。その言葉は25歳の夏、東京で実現した。

 淡路市の男子1区を担ったのは津名高3年の坂東悠汰。1区10キロで実業団や大学生ランナーらに真っ向勝負を挑んだが、結果は30分29秒で16位に終わった。大学に進学後、ともに洲本市の1区を担った2017年は29分27秒、19年は29分2秒で区間トップで走った。190センチの長身ランナーは存在感を強め、後輩たちの憧れの的となっていた。

 「小林祐梨子」という時代が終わったあの日、あの時、あの場所にいた未来のオリンピアンたち。春が来て、田中は西脇工高へ、前田は天満屋へ、坂東は法大へ-と新天地に向かった。

 それぞれに飛躍を遂げ、たどり着いた東京五輪。田中は1500メートルで予選、準決勝と日本新記録を連発して決勝で8位に入った。日本女子で初の五輪1500メートル出場、初の3分台、初の決勝進出、そして初の入賞と、一気に歴史を塗り替えた。男子5000メートルで予選落ちした坂東は「こういうレースで勝たないと、世界の選手とは戦えない」と国際舞台のレベルを肌で感じた。女子マラソンで33位に終わった前田は「次に向けて頑張りたい」と巻き返しを誓った。

 8日の閉会式が終わると、3年後のパリ五輪に向けた戦いが始まる。加古川河川敷で空間と時間を共有した3人は、わずか6年半で五輪選手となった。次代を担う兵庫のオリンピアンも、きっとすぐそばにいる。

(大原篤也)

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