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大学のジムで下半身を鍛える古瀬愛恵。目標は世界女王だ=神戸市北区鈴蘭台北町、神戸親和女子大学
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大学のジムで下半身を鍛える古瀬愛恵。目標は世界女王だ=神戸市北区鈴蘭台北町、神戸親和女子大学
古瀬愛恵
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古瀬愛恵
女子相撲の全国学生選手権の軽量級で優勝し、笑顔の古瀬愛恵=東京都杉並区(本人提供)
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女子相撲の全国学生選手権の軽量級で優勝し、笑顔の古瀬愛恵=東京都杉並区(本人提供)
大学のジムで下半身を鍛える古瀬愛恵。目標は世界女王だ=神戸市北区鈴蘭台北町、神戸親和女子大学
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大学のジムで下半身を鍛える古瀬愛恵。目標は世界女王だ=神戸市北区鈴蘭台北町、神戸親和女子大学

 部員1人、土俵なし。神戸親和女子大学(神戸市北区)の「相撲愛好会」に所属する1年生の古瀬愛恵(まなえ)が、相撲道に独り向き合い、精進を重ねている。昨秋は全国学生女子相撲選手権で、軽量級の日本一に輝いた。四つ相撲が得意の18歳は、大学生活を競技人生の区切りと決め、世界選手権での躍進を思い描く。(有島弘記)

 小雪が舞う夜。同区の大学を訪ねると、古瀬が一礼して迎えてくれた。身長158センチ。束ねた黒髪を揺らし、取材場所に案内してくれた。

 山深い長野県で生まれ育った。小学1年生の時、男子に交じって参加した地元の相撲大会で3位に。同郷の関取で、大関昇進が決まった御嶽海の父親から相撲クラブへの入会を勧められた。

 クラブには一つ上の女子選手がいた。「すごく和やかな雰囲気で、遊び感覚だった」と古瀬。男子に交じって稽古し、小学6年生の時に女子の全日本小学生大会の50キロ未満級(学年別)を制した。

 中学校ではバスケットボール部に入りながら、卒業まで2年連続で女子の全日本中学生大会3位(50キロ未満・全学年対象)。強豪の鳥取城北高校から推薦入学のオファーが届いた。

 「中学では日本一になれなかった。自分を変えられると思った」。親元を離れると決めたが、父親が猛反対した。同校は横綱照ノ富士らを輩出した名門で、女子は男子と別に活動していたが、厳しい稽古が想像できた。説得しても聞いてくれず、高校に返事をする期限の朝、行動に出た。

 中学校に行く支度を終え、父親の寝起きを待った。居間に現れた瞬間、「(鳥取に)行くから」とだけ言って登校。決意を突きつけ、先方に進学を伝えた。

 入学後、社会人や海外選手が出場する女子の国際選抜堺大会で軽量級(65キロ未満)3位と早くも結果を残した。娘の頑張りに、父親も応援に回ったが、1年生の冬に腰を痛めて以降、成績が振るわなくなった。3年生は新型コロナウイルスの猛威で全ての大会が消えた。

 大学は、鳥取城北高と協定を結ぶ神戸親和女子大を選んだ。相撲部はなく、愛好会からのスタート。当然、キャンパスに土俵もなかったが、逆に燃えた。

 「土俵がなくてもトレーニングはできる。相撲は一瞬で勝ち負けが決まるからこそ、日々の一瞬が大事になる。土俵がなくても勝てると、証明してやろうと自分の励みにした」。

 長期休暇や大会前こそ鳥取へ出稽古に戻ったが、普段は構内のグラウンドや武道場で1人、四股を踏み、ジムで鍛えた。「自分でも言うのもあれですけど、圧勝でした」。昨年11月の女子の全国学生選手権では下手投げが次々に決まり、軽量級5人によるリーグ戦を全勝優勝。努力が実った。

 一方で、「女子は相撲で生きていけない」と、大学生活を競技人生の区切りに決めている。仕事と相撲を両立する環境は限られ、神戸親和女子大に進学したのも、保健体育の教員免許を取るためだった。

 昨年12月からは足や腕の操作性を高めようと、ボクシングジムに通い始めた。毎年夏ごろ、階級別の世界選手権が開かれ、「目標は世界一。覚悟を持ってやっている」。自ら決めた期限はあと3年。古瀬の挑戦は続く。

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