北京冬期五輪が開幕する4日、北翔大学(北海道)と神戸大学(神戸市)などは、スキージャンプで金メダルが期待される小林陵侑選手の動きをスーパーコンピューター「富岳」で解析した成果を発表した。一般ジャンパーに比べ背面の気流の乱れが少なく、それが後半の粘りにつながることが分かったという。研究チームは既に結果を本人や指導者に伝えており、「科学でサポートできれば」とエールを送る。
北翔大学の山本敬三教授によると、スキージャンプの動作が空気にどう影響するかを調べる「空力」の研究は以前から行われてきたが、風洞での実験や模型を使った同一姿勢時の計算にとどまっていた。踏み切りから着地まで刻々と変わる動作の空力への影響は分からず、体格や動きの違いも把握できていなかった。
今回、ジャンパーをレーザーで立体的にスキャンして体の形状データを取り、飛行中の動きをセンサーで捉える「モーションキャプチャー」という手法で一連の動作を再現。理化学研究所が開発した特殊なソフトを使い、富岳で解析した。
小林選手を、同じ体格と仮定した一般ジャンパーと比べた結果、特に飛行の後半で背面の気流の乱れが少ない状態が続いていることが判明。今後さらに、なぜ気流の乱れが抑えられるかなどを研究する。
神戸大教授の坪倉誠・理研チームリーダーは「将来的には、富岳の強みを生かし、2回目のフライトまでに1回目のシミュレーション結果を出すことも目指したい。数十パターンを同時に解析したものを人工知能(AI)に機械学習させ、選手ごとに飛び方を提案できる日が来るかもしれない」と話している。(霍見真一郎)
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