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人生の転機となった脳挫傷を振り返る杉本七海S&Cコーチ=西宮市上ケ原八番町、関西学院第2フィールド
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人生の転機となった脳挫傷を振り返る杉本七海S&Cコーチ=西宮市上ケ原八番町、関西学院第2フィールド
選手に寄り添う姿勢を大切にする神戸ファストジャイロの杉本七海S&Cコーチ=西宮市上ケ原八番町、関西学院第2フィールド
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選手に寄り添う姿勢を大切にする神戸ファストジャイロの杉本七海S&Cコーチ=西宮市上ケ原八番町、関西学院第2フィールド

 ラグビーの女子クラブ「神戸ファストジャイロ」でコーチを務める杉本七海(ななみ)さん(27)=兵庫県姫路市出身=は3年前、試合中の接触プレーで脳挫傷を患い、引退に追い込まれた。日本代表での活躍が期待されるほどの実力の持ち主だったが、今は大けが予防など身体の専門職として裏方に回る。自分と同じ境遇の選手を生まないために-。(有島弘記)

 「しっかり半身になって」「股関節を意識して」。練習開始前、選手たちに手本を見せながら、正しい姿勢や意識するポイントを声で導く。固まった体をほぐし、プレーの衝撃を和らげる柔軟性をつくる。

 現役引退後の昨年4月、神戸ファストジャイロの一員になった。スタッフ2年目の今季は「ストレングス&コンディショニング」を意味するS&Cコーチとなり、ウオーミングアップだけでなく、選手のプレースタイルに合わせた身体の強化やケアに取り組む。

 肉体を見ることが第一だが、対話に重きを置く。「どう生きていきたいのか」。フルタイムの仕事や学業で忙しくても、競技を続ける「根本」を認識すれば、集中力や本気度が増し、好パフォーマンスにつながると信じている。

 選手に生き方まで問う背景には、志半ばで道を閉ざされた後悔がある。

 三重パールズの快足ウイングだった2019年12月、名古屋での公式戦。同年3月に日本代表に選ばれ、再招集に向けたアピールに力が入っていた。

 試合後半、味方にボールを投げた瞬間、記憶がなくなった。真後ろから来た相手のタックルを食らい、目の前の選手と挟み撃ちに。衝撃で斜め前に倒れ、頭を人工芝に強打した。

 脳のダメージは大きかった。「右半身はビリビリ。正座した後の感覚が頭から足先まで」。まひが生じ、言葉がうまく出てこない症状なども起きた。

 復帰か、引退か-。チームには対人プレーの危険性から引退を勧告された。「諦めたくない。もう少し時間を見れば」と受け入れられず、受傷後1年近くたっても気持ちは揺れた。

 未練は恩師の言葉で断ち切った。当時、三重パールズのエグゼクティブアドバイザーを務めていた記虎(きとら)敏和さん(70)。男子の高校ラグビー界で何度も全国制覇を果たした名将だ。

 「日本代表としてワールドカップ(W杯)に出ることが一番偉いわけではない。けがをしたことで伝えられることがあると思うぞ」

 学生時代から最適な身体運動をテーマに研究を続け、競技と並行して大学の助手も務めていた。大けがの予防にもつながる分野だ。「教科書とは違う伝え方。この経験(脳挫傷)を意味があるものにしたい」と心が決まった。

 振り返れば、ラグビーとは偶然の出合いだった。姫路南高校の陸上部員だった3年夏、インターネットで関西協会のトライアウトを知り、応募した。強化育成選手に合格したことで、後の日本代表につながった。

 「でも、誰も将来は約束されていない」。まひなど多くの症状は回復したが、今も慢性的な頭痛が残り、騒がしい場所では聞き取りづらい。

 だからこそ、選手の安全を守り、未来を輝かせたい。日の丸を背負うぐらい価値がある仕事を全うする。

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