バスケットボール女子Ｗリーグに新規参入した姫路イーグレッツのシューティングガード白崎みなみ主将（２６）が、１試合平均得点「２４・６７」でリーグ首位に立ち、交流サイト（ＳＮＳ）で話題になっている。チームは１勝５敗の１３位と下位ながら、東京五輪銀メダリストらを抑えて独走状態。一体、何が起きているのか。

■「フェイスガード」でも止まらない

　１６６センチと上背のないプレーヤーが「本物」ぶりを示したのが１１月６日、２連覇中のトヨタ自動車との試合だった。第２クオーター、白崎に３点シュートを許したトヨタ自動車はタイムアウト。直後、日本代表ポイントガード（ＰＧ）の山本麻衣が白崎の真正面から体をくっつけ、徹底マークしてきた。「フェイスガード」という守り方だ。

　相手が圧力を強めても、背番号６は止まらない。左右に切り返して山本を置き去りにすると、パスを受け、球を浮かせるフローターシュートで得点。さらに外角から山本の横を走りぬけ、ゴール前でキャッチ、即シュート。女王チームを相手に３３点を奪った。

■麒麟の田村さんも驚きの投稿

　お笑いコンビ「麒麟（きりん）」のメンバーで、バスケット好きで知られる田村裕さんも注目。新潟との開幕節第２戦で白崎が３４点を稼いだことに、ツイッターで「何これ！？　ＮＢＡ選手？？」と投稿した。チームは９７－７８でリーグ参入後初の白星を挙げた。

　Ｗリーグは現在、レギュラーシーズンのうち、約４分の１にあたる６試合が終了。白崎は１試合平均で、代表歴のある２位渡辺亜弥（三菱電機）に４点以上の差をつけるほか、宮沢夕貴（富士通）、高田真希（デンソー）ら五輪組の記録も上回る。

　この活躍は想定内なのか？　姫路の伊与田好彦ヘッドコーチ（ＨＣ）に聞くと「いえいえ、全く。まさかですよ」と目を丸くする。

　白崎自身も驚きを隠せず「プレッシャーがでかい」と苦笑い。「少しでも通用する部分があるとうれしい。一瞬であっても、誇りに思う」と控えめに喜んだ。

■午後４時まで働き、その後練習

　白崎はどんな選手なのか。埼玉県越谷市出身で、千葉・市柏高から奈良学園大に進学。関西学生リーグで得点王とフリースロー王に輝いたが、全国的に有名なプレーヤーではなかった。

　当時、地域リーグからＷリーグへの参入を目指していた姫路に声をかけられ、「熱心に誘われた。周囲のサポートもいい」と２０１９年春、加入した。

　現在、兵庫県朝来市のプラスチック加工会社「Ｍ－ＴＥＣ」で正社員として午後４時まで働き、その後コートに向かう日々。練習時間は他チームに比べて少ない。

■スピードがなくても

　白崎が点を量産できる理由について、伊与田ＨＣはこう語る。

　「そんなにスピードがあるわけじゃない。でもシュートで、タイミングとボールの位置をずらすのがうまい。普通はドライブのスピードに乗ったまま打つが、白崎は２歩目で速さを緩めたりする」

　「その『ずれ』は意識している」と本人。「ここで打ったらフリーだとか、こう行けば相手を抜けるとか、イメージしたことを体で表現できる。怖がらずにいくのが一番」とも話し、男子日本代表ＰＧ河村勇輝（横浜ＢＣ）らのプレーを参考にしているという。

　伊与田ＨＣによると試合のほか、練習でも５対５の実戦形式になると急にシュートが入りだすといい「不思議。アドレナリンの出方が違うのかも」とうなる。

　一方で、仲間たちが最年長２６歳を支えているのも事実だ。

　リング近くで白崎にボールを持たせ、味方は外に広がって相手守備にカバーに行かせないなど、エースに多投させる展開を意図的につくっている。だから一人の得点が伸びやすいが、それにしても強豪相手の決定力は評価が高い。

　　　　◇

　姫路は１２月１０、１１日、姫路市のヴィクトリーナ・ウインク体育館で初のホーム戦を迎える。チームのスポンサーが「誰もみなみを止められない！」と書いたポスターを作るなど、地元も盛り上がりを見せている。

　昨季１１位アイシンとの２連戦を前に、白崎は「点を取るのが私の仕事。応援してくれる人が増えるようなプレーをしたい。ここからが勝負」と気合を入れた。（藤村有希子）