兵庫県丹波篠山市出身でプロ野球ロッテの中森俊介投手（２０）が今季開幕戦で１軍デビューを飾った。明石商高時代にエースとして２０１９年の甲子園大会で春夏連続４強入りに貢献し脚光を浴びたが、ドラフト２位で加入後はケガなどもあり２年間１軍登板なし。今オフの帰省時には「去年は浦和（寮）にずっといてシーズン中楽しみがなかった。今年こそ開幕から１軍で投げないといけない」と並々ならぬ決意を語っていた。人口約４万人のまちの期待も背負う高卒３年目右腕がようやくベールを脱いだ。

■明石商高卒3年目、待望の春

　３月３１日、敵地でソフトバンクとの開幕ゲームで２番手として１軍初登板。１死走者なしでマウンドに上がると、ストレートで１５２キロをマークするなど、打者２人に安打を許さなかった。３戦目の４月２日も六回に登場。先頭打者に安打を許したものの、打たせて取る投球で無失点に封じた。

　待望の１軍マウンドに地元で見守っていた家族もほっとした様子。開幕前、福岡遠征に帯同するという知らせを受け、テレビ画面にくぎ付けだったという母の美幸さん（４４）は、中継の途中で映るブルペンのモニターまで確認。３点を追う六回からマウンドに上がると「一球、一球、拍手を送っていました」。試合後「よかったね」とＬＩＮＥを送ると、本人から「スタートラインに立てた。いっぱい投げたい」などと返信があったという。

■本人よりも家族が…

　新型コロナウイルス禍の制限もあり、家族は２軍での公式戦なども含め、プロになって投げている姿を直接見ることができていない。「本人はそんなことなかったんですが、家族が焦りを感じていました」と美幸さん。今後は、関西で行われる試合の応援に駆けつける予定といい、高校の同級生でオリックスの開幕スタメンだった来田涼斗外野手との明石商高対決を楽しみにしていた。シーズン前、中森投手も「こっち（関西）に帰ってきて投げたいですね。野球部全員を招待したいです」と話しており、凱旋（がいせん）登板を熱望している。

■黒豆ナイター「今年は投げたい」

　摂津、播磨、但馬、丹波、淡路の「兵庫五国」のうち、丹波地域出身の現役プロ野球選手は唯一。少子化の波が押し寄せる地元から受ける期待もひときわ大きい。丹波篠山市は入団した２１年からロッテの本拠地、ＺＯＺＯマリンスタジアム（千葉県）で、市名を冠した協賛試合を行ってきた。

　「黒豆ナイターに今年は投げたい。中継ぎだと出るチャンスも多い」と中森投手。他にも、市のポイ捨て禁止の啓発看板でモデルを引き受けるなど、地元貢献も忘れない。今年１月、「成人の日」を前に行われた「はたちのつどい」では、代表あいさつを担当。篠山東中時代は生徒会長だったことから、同窓会を中心となって計画し練習の合間を縫って準備に奔走した。「田舎出身でもやれることを証明したい」と常々語ってきた地元の星がブレークの予感だ。（尾藤央一）

【中森　俊介（なかもり・しゅんすけ）】２００２年５月２９日生まれ、丹波篠山市出身。千葉ロッテ・マリーンズ投手。１８２センチ、９０キロ。右投げ左打ち。背番号５６。小学２年から多紀野球少年団で白球を握る。チームは６年時に合併し、母校はその後閉校した。１２歳までピアノを６年間習い「手先は器用」。篠山東中時代は軟式野球部。明石商高で４度甲子園を経験した（３年次は新型コロナウイルス禍で交流試合）。ロッテ入団１年目は公式戦未登板。秋のフェニックス・リーグで実戦デビュー。２年目の２２年は２軍で６試合（３先発）を投げ、１勝、防御率０・９０だった。曽祖母がつくる黒豆が好物。シーズン中は「グルテンフリー」に励み、最近は納豆やキムチなど発酵食品を好む。嫌いな食べ物はチーズ。今年の目標は「健康第一」。キャッチボールが好きだが「投げすぎないこと」を意識している。投球前の両手を広げて息を吐くルーティンは中学１年から継続しており「少ない力でパワーを出す古武術の動きを取り入れている」という。