ラグビーの名門、神戸製鋼を前身とする神戸がリーグワン１部で１２チーム中９位に沈んだ。国内外の代表経験者が１９人もおり、戦力的に見劣りしたわけではない。それなのに、浮上の糸口すらつかめないままシーズンを終え、昨季の７位からさらに順位を下げた。トップグループからの転落は、なぜ起きたのか。（有島弘記）

■夜空に消えた声

　１４日、花園ラグビー場。キャプテンが発した指示の声は仲間に浸透することなく、夜空に消えていった。

　それまで１４戦全敗だった花園に対し、前半を２３点リードで終了。ここから一転、後半開始９分で２トライを返されると、多くの選手がパニックになった。「解決方法と次にやるべきことを簡単に」。橋本主将はポジティブな声もかけたというが、ベテランが危険なプレーで一時退場するなど規律は乱れ続け、まさかの逆転負けを喫した。

　今季の神戸は試合後半に失速を繰り返し、２００３年度のトップリーグ（ＴＬ）スタート以降で初の４連敗を経験。１シーズン最多の１１敗を喫し、９位という順位も過去最低だった。１８年の日本一からわずか５年で没落した。

　２３日の最終戦は退場者を出して横浜に大敗。今季のスローガンは、互いに信頼し合う「ＴＲＵＳＴ（トラスト）」だったが、そんな姿はみじんもなかった。

■支援はあるのに…

　昨季のリーグワン発足を機に、大物外国人が続々と来日し、チーム間の力の差が急速に縮まった。有望大学生の獲得では関東勢が優勢。今季のレギュラーシーズンは「東」のチームが５位までを占めた。

　とはいえ「西」の神戸もＳＯ李承信（リ・スンシン）、ＦＢ山中ら現役日本代表を擁し、海外勢も強力。東葛の元日本代表レメキが３月に神戸に大敗した際、「神戸はトップ４にいるべき」と嘆いたほどだ。

　施設面も優れている。リーグワン発足前に新クラブハウスが完成。従来の３倍の広さで屋内練習場も備えたが、７勝９敗（不戦敗２）に終わった昨季に続き、チームを運営する神戸製鋼の支援に応えられなかった。

■打開策示せず

　指導力にも疑問符が付いた。開幕直前のホルテン・ヘッドコーチの言葉を振り返ると、そう思わずにはいられない。

　「今シーズンのチャレンジは８０分やり切ること」。昨季より約３カ月早く始動し、準備時間はあったはずだが、プレシーズンマッチでも後半に失点を重ねることが多かった。

　悪癖に対処できず、攻めても神戸特有の細かなパス回しを「ラインスピードを上げてプレッシャーをかける」（埼玉）ことで対策された。今季の総トライ数は６６。新型コロナウイルスの影響で３試合少なかった昨季の７２にすら届かず、主力の一人は「組織的な部分もあると思う」と漏らした。

　２８日には福本チームディレクターらが会見し、来季の体制について言及する見込み。レタリック、サベアとニュージーランド代表の大物ＦＷが加わることが決まっているが、選手と指導陣が一体になって戦えない限り、名門復権は遠い。