発達障害などがある人の暮らしやコミュニケーションをサポートする「視覚支援」のツールを手がける会社「おめめどう」(丹波篠山市味間奥)が、創業20周年を迎えた。奥平綾子社長(61)が、子どもの自閉症をきっかけに視覚支援を実践し始め、現場の声を生かしながら製品化。現在は全国で利用され、認知症のサポートに使われるなど、さらなる広がりを見せている。12日には20周年の記念講演会が同市で開かれる。(秋山亮太)
奥平さんは1995年、当時3歳の次男が自閉症と診断された。障害について学び始め、米国で開発された自閉症の人とその家族を支援する「TEACCH(ティーチ)プログラム」と出合った。
「自閉症の傾向がある人は、状況が明確に整理できないと混乱することがある」と奥平さん。文字や絵などで視覚化するコミュニケーションは音声よりも状況理解がしやすく、具体的に伝えることで不安や混乱が軽減できるという。
当時地域では実例がほとんどなく、自身で視覚支援ツールを自作することから始めた。講演活動にも取り組んだが「聞いてくれても実践の輪はなかなか広がらなかった」。ツールの自作に壁があると気付き、文字を書いたり絵や写真を添えたりして使うカードやスケジュール表のフォーマットの製品化、販売を計画。2004年に自閉症の子どもを育てる親らと「おめめどう」を起業した。
質問と回答の選択肢を書いて意志を聞く「えらぶメモ」や、今後の予定を時系列に書いて整理する「みとおしメモ」など、多様なツールを開発。製品に込めた考えを毎日発信するメールマガジンや、当事者らへの相談支援も約20年続けてきた。
中でも巻物状のカレンダーは広く普及した。1カ月を横ひと続きで見ることができ、振り返りや見通しが立てやすい。近年は認知症の人でも見やすいと、利用が増えているという。
東日本大震災をへて「アナログの大切さに目が向いたことも大きかった」と奥平さん。スマートフォンなどを使ったより便利な支援ツールもあるが、ペンさえあれば使えるおめめどうの製品は「使う場所やスキルの敷居が低い」という強みに気付いた。
20年を振り返り、「少しずつ視覚支援の理解は広がってきた」と話す奥平さん。節目を迎えたことに手応えと喜びを感じつつ、「視覚支援という手法を次の世代につなぐためにも、ツールを残す手だてを考えていきたい」と前を見据えている。
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おめめどう創業20周年の記念講演会は12日午後1時半から、四季の森生涯学習センター(丹波篠山市網掛)で開かれる。「子どもの権利から考える合理的配慮」をテーマに、東京大バリアフリー教育開発研究センターの飯野由里子さん、学びプラネット合同会社の平林ルミ代表が講演する。参加費2千円。講演後はおめめどうのツールの展示、販売もある。おめめどうTEL079・594・4667