黒豆卸の老舗「小田垣商店」(兵庫県丹波篠山市立町)が、運営する1棟貸しの宿泊施設「豆家」の宿泊客向けに「能楽」を体験、鑑賞できる限定プランの販売を始めた。豆家は、本店敷地にある国登録文化財の建物を活用した施設。隣接する蔵や座敷で、プロの能楽師による講義後、貸し切りで能を鑑賞できる。4月に最初の宿泊客2人が訪れ「2人だけではもったいないくらいの経験ができ、感動した」と大喜びだった。(堀井正純)
能は武家文化の一つ。旧青山藩の城下町・丹波篠山でも継承され、市内には民営の能楽資料館があるほか、国重要文化財「春日神社能舞台」では毎春、「篠山春日能」が催されている。
豆家では町に息づく「能文化」に注目し、このプランを企画した。講師役は、観世流シテ方の能楽師・上田宜照さん(西宮市)。神戸市出身で、2歳で初舞台を踏み、ベルギー国王観覧の公演などにも出演経験がある実力派だ。
同プラン初の宿泊客は、愛媛県から訪れた主婦2人。講義は古い蔵の中で行われ、上田さんは代々家に伝わる能装束や能面、扇などを用意し、中世から続く伝統芸能である能の基礎や魅力について説明した。
2人は上田さんのファンといい、本人の手で能面を着けてもらい、装束を羽織らせてもらって、感激の面持ち。「能面を着けると、視野がものすごく狭くなる」と驚きや発見もあったようだった。
能舞台を模した板張りの座敷は、世界的な美術家・杉本博司さんのデザインで改修されたもの。2人は能装束を身に着け、能の足踏みや舞の一部の指導も受けた。
最後は2人がリクエストした能の演目「吉野天人(てんにん)」の一部を上演。桜で有名な奈良・吉野の花見を題材にした作品で、上田さんの弟・顕崇さんが地謡(じうたい)を担当し、上田さんが天女役を演じて、優美で厳かな舞を披露した。
間近で鑑賞した2人は「(感動で)震えるくらい。余韻に浸りたい」「上田さんはいい声で、発声が素晴らしく、迫力がある」などと話していた。2人は茶の湯をたしなんでいるといい、「能と茶道は所作など通じる部分もあると感じた」とも話していた。
今後の開催は5月23日、10月30日など。宿泊料金は2人で27万5千円(税・サービス料込み)。市内の提携料理店での夕食などがセットとなっている。
豆家のスタッフは「能楽師と身近に交流しながら、普段はなかなか触れる機会のない能の世界を堪能してもらえる」とPRしている。豆家TEL079・556・8048






















