千円もあればべろべろに酔える大衆酒場を意味する「せんべろ」が多く集まり“聖地”とされてきた東京都葛飾区の立石は今、駅前の再開発が進み、風景が大きく変わろうとしている。街の現在を確かめたくなり、京成立石駅に降り立った。
変化は一目瞭然だった。路地に小さな居酒屋が密集した「☆(蚕の虫が口)んべ横丁」があった駅北口は更地となり、大きなフェンスに囲まれて工事が始まっている。タワーマンションなどが完成する予定だ。
駅の南口側はノスタルジックな昭和の風情がまだ多く残っているが、この地域も再開発の計画が決まっている。戦後の闇市が起源とされる立石仲見世商店街を歩き、少し路地に入った「立石舟和」を訪れた。芋ようかんで有名な東京・浅草の「舟和」からのれん分けした老舗の甘味どころだ。せんべろの街らしく抹茶ハイと菓子の「おとなセット」もあるが、抹茶との「舟和セット」を注文。「芋ようかんの原材料はサツマイモ、砂糖、食塩のみで、手作りにこだわっています」という店側の説明通り、素材のおいしさが口の中に広がる。
この日は寒気の影響で肌寒かった。アーケードの中にあるおでん種店「丸忠蒲鉾店」の店先の湯気に誘われ、隣接する居酒屋「おでんの丸忠」へ。狭い店内のカウンターは常連客でいっぱい。立石の街で飲むのが好きで15年ほど前、区内に引っ越して来たという50代の男性は「この街での人の出会いが僕の人生の全て。この空間がなくなることを想像したら…」と少し涙ぐみながら語り、一同は笑いながらも大きくうなずく。
「再開発後のテナントには入るつもりはない。移転先があればずっと続けていきたい」と丸忠蒲鉾店の日高幸子さん(76)。記者はお酒を控える身となったが、おでんや人情の温かさを味わいに、またこの街に来たい-。そう思いながら立石を後にした。
【ちなミニ】京成立石駅から徒歩約10分の場所に、地名の由来とされる小さな石標「立石」がある。
























